『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  288

2014-06-05 07:23:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『頭領、樹木調査の折には、はなはだお世話になりました。紹介いたします。こちらが我らが隊長のオキテス隊長です。ご両人、お知り合いのようですね』
 『おう、よく知っている。このようにして会うのは初めてだが、今日が二度目だ。君らの集落を訪ねたおりに。よく話をした、そのようなわけでよく知っている』
 『ガリダ殿、お久しぶりです。お変わりなく元気の様子、何よりと存じます。私も元気だけが取柄で、今日、ここへ統領の名代として、樹木調査で大変お世話になったお礼に参上しました。ガリダ殿もご存じだと思いますが、私らが作り集散所で取り扱っているパンを持参しました。笑味いただければ幸いです』と言って持参したパンを差し出した。
 『お~お、それはそれは、あの旨いパンか、喜んでいただく。あのパンは旨い、あのパンの旨さは、この舌がよく覚えている、重畳重畳!』
 ガリダは喜んだ。まさに両手放しで喜びをあらわにした。
 オキテスは、イリオネスに無理を言って、ねだって持参した『方角時板』を袋より取り出してガリダに手渡した。
 『ほっ!これは何だ?この俺が初めて目にするモノだが、、、』
 『はい、これは私らが『方角時板』と呼んでいる道具です。今は空が曇っていて、太陽が見えませんが、陽が照っていて、この真ん中の棒がつくる影で、今は午前のどきか、また、午後の何どきぐらいかが解る板です。また、この鉄の棒は、常に決まった方角を指し示す棒なのです。この赤いほうが指し示す方角が北です。この白いほうが指し示す方角が南です。この鉄の棒一本で星の見えない夜でも、方角を間違えずに航海するのに使います。また、広い荒野の、道なき道を進むときにも方角を間違えずに進むことができるのですな。ちょっと、拝借して使い方をご覧にかけます』と言ってオキテスは、鉄の棒の中心に結びつけているヒモの端をつまんで吊るし下げた。
 揺れていた棒が静止した。
 『ガリダ殿、見てください。こちらが北です。間違いないと思いますが、、、』
 『おう、そうだ。その方角が北だ。オキテス、操作したのではあるまいな、、、』
 『そのようなことはしません』