『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  303

2014-06-26 06:45:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 漁は大漁であった。彼らにとって、ミラクルともいえる漁の成果であった。そのねぎらいをも込めて催行した浜焼きの宴はこのうえなく盛りあがった。
 アレテスとギョリダは今日のヒーローである二人は、スダヌスの問いかけに謙虚に答えた。
 『漁の成果は、その日、その時の出目だと思います。今日の漁は、私たちの運が良かっただけです』
 『そうだわな。でっかくて広い海だ。我々でどうのこうの出来はしない。俺ら漁師にとっても海の中は迷界だからな。漁には運不運がつきまとう』
 スダヌスは、二人の返事にうなずいた。更に、アヱネアスらにも漁の模様を語って心情を吐露した。
 宴は深更に至るまで続いた。この時代の深更は今様時間の8時頃ですでに深更であった。
 宴ははねた、パリヌルスは、スダヌスたちを寝所となる建屋へと案内した。彼は、道すがら明日の予定について簡単に説明した。

 日が替わり話し合いの時が訪れた。話し合いの場は小島である。スダヌスたちはスダヌスの船で、アヱネアスらはいただきものの小船で島に渡った。
 イリオネスは、小船を見た。
 『お~、なかなか使い勝手のよさそうな船ではないか。これは統領から一言、礼を言ってもらわないといかんな』
 『お願いします』とパリヌルスが答えた。程なく、一行は小島の浜に降り立った。
 一行は、島の中央に準備されている話し合いの場に着いた。スダヌス側がスダヌスの息子たち二人とスダヌスが右腕としている二人の五人、アヱネアスらは幹部五人とアレテス、ギョリダを加えた七人で話し合いが始まった。
 まず、パリヌルスが口を開いた。
 『ご一同、おはようございます。今日の話し合いの進行係は私が努めます』
 『お~お、それがいい!』
 一同の賛同を受けた。
 『話し合いに入る前に、統領からの一言を受けます。統領お願いいたします』
 『話し合いを始める前に、私からのひとことです。スダヌス浜頭。このたびはありがとう。心から礼を申し上げる。あの小船だが大切に使わさせていただきます。誠にありがとう。礼を言わせてもらいます。今日は我々が進めようとしている漁について、スダヌス浜頭を交えての話し合いである。充分に納得できるように話し合ってもらいたい。パリヌルス、進めてくれ』
 話し合いはスダヌス浜頭の昨日の漁についての話から始まった。彼は、一同を見まわした。目が合う、阿吽の呼吸でうなずき合った。
 『いやいや、昨日は、皆さんのやられる漁をこの目でとくと見させてもらいました。私も漁師だが我々漁師の漁とはかけ離れたスケールの漁をやられのには驚きましたな。これこの通り、漁の主役をやられた二人を称賛するとともに、このやり方を思いつかれた方々に賛辞を贈る次第です』
 この言葉に一同から拍手が起きた。一同は互いに敬意を表して手を握り合った。パリヌルスは一同を見まわして口を開いた。
 『では、本題にはいります。スダヌス浜頭、如何でしょうか、一度の漁であれだけの量の漁獲があるわけです。しかしです、魚の売りさばきについては漁をやる時間帯の問題もあります。集散所の売り場に魚を出品するとなれば、魚の魚種もさることながら魚の鮮度が重要視されます。昨日の漁のやり方で獲った魚は、集散所の売り場への出品は出来ないことです。そのようなわけで、獲れた魚に手を加えて、加工したうえで集散所の売り場にと考えてはどうかと考えているところです。また、早朝の漁については今後の課題としています』
 彼は最初の提案を述べた。