『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  300

2014-06-23 07:28:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『スダヌス浜頭、紹介します。こちらが隊長のアレテス、そして、こちらが漁を采配しているギョリダです』
 二人は、名を名乗り、スダヌス浜頭と手を握り合った。スダヌスは、短く来訪の意味を二人に伝えた。三人は、これから、この小島で起きることを三人三様で頭の中に描いていた。
 スダヌスは思った。『こいつら漁師でもないのに、どのように漁を展開するのか?』不可解であった。
 漁の準備はできている。用具等は、すでに2隻の用船に積んである。ギョリダは、ちょくちょく空を見上げてタイミングを計っている。
 陽が雲の陰に隠れた、その時が訪れた。
 『今だっ!』
 ギョリダが突如大声をあげた。
 『全員、乗船!急げっ!漕ぎかた位置につけっ!』
 全員が用船めがけて走る、海の浅瀬に飛沫を上げる、腰まで海につけて船に取りつく、全員乗船を終えた。
 またもや、ギョリダが大声をあげる。2隻に分乗している全員に届く大声である。彼は檄を発した。
 『これより漁に出る!漕ぎかたはじめっ!』
 船は漁場を目指して波を割った。泡立てた航跡を引いていく。スダヌスの船は彼らの船を追った。パリヌルスとオキテスはスダヌスの船に乗っていた。
 2隻の釣り用船は、小島から北東に1.5キロ余り離れた地点に停船して、碇石を海中にほうりこんだ。
 ギョリダはしばし考えた。『ここでいいのか?』そして、船から身を乗り出して海の中を覗き視た。
 彼は『もういいだろうか?』と空を見上げて釣糸を海に降ろすタイミングを計った。
 陽が流れてきた雲に隠れ始めた。彼は大声で指示を出した。
 『釣りの開始だ!釣りかたはじめ!』
 全員、一斉に釣糸を海に垂れた。ギョリダは、モゴモゴとつぶやいた。
 『はじめチョロチョロだ、パッパにまだ間がある』
 彼の思惑の的中である。彼は静かに様子を見渡した。
 チョロチョロが始まった。
 『おう、いいぞ!いい兆候だ』
 魚が、間をおいて、あちこちで釣れ始めた。彼は、ジイ~ットときの熟するのを待った。時が熟したらしい、竿が立ち始めた、魚が釣れ始めた。
 スダヌスは、釣果より彼らの仕事ぶりを観察した。彼は、目の前に展開している漁の景色をじい~っと見つめた。