『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  292

2014-06-11 07:49:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスがガリダの許を辞するときとなった。
 『やあ~、ガリダ殿、大変、馳走になりました。ごちそうさまでした。私どもの申し入れを聞いていただき誠にありがとうございました。私どもも帰りの船便の事もあり、これにて失礼いたします。集落においでになる節には連絡いただければ船の都合もいたします。是非、足を運んでください』
 オキテスは、辞去する言葉を丁寧に述べた。
 彼らは帰途に就いた。キドニアの船だまりには、彼らの到着をギアスは待っていた。オロンテスたちはすでに艇上にいた。
 『あ~、オキテス隊長、思ったより早かったじゃないですか。すぐ、艇を出していいですね』
 『おう、いいぞ。風の具合はどうだ?』
 『朝、こちらに向かってきたときに比べて、風は、少々落ち着いてきているようです』
 『なれば、いい!』
 ギアスが漕ぎかた一同に向かって声をかけた。
 『出航っ!漕ぎかた始めっ!』
 漕走でニューキドニアの浜を目指して波を割って進んだ。波がしらが風にくだけた。
 艇上では、オキテスとオロンテスの話し合いが弾んだ。
 『オロンテス、いいか。ガリダと話し合ってみてだが、俺たちの目論見がちょっとだが外れていた。それが判った。もし俺たちの一存で事を進めると、トラブルが発生していたかもしれないことが判明した。ガリダは、この辺り一帯の樹林を取り仕切っているらしいことが判った。まあ~、彼らも生きていかねばならんからな』
 『トラブルを避ける。ためにならぬ、もめごとは起こさない、それをよしとしよう。出来るだけ他力を生かしてやることも処世の術の一つといったところだな』
 『所詮、利は我らにあるようにしてだな』
 『そうだ、そうあるべきだろう』
 舟艇は、向かい風に抗して浜に帰り着いた。
 『おう、パリヌルス、今帰ったぞ』
 『どうだった?』
 『ガリダのところは、話がついた。礼にかこつけて、ガリダと充分に話し合った。これまだ見えていなかった部分を見ることができた。ガリダは、この辺り一帯の樹林を利権化していることが判った。ガリダが我々の樹木調査隊に、なぜ、案内人を付けたのか、その理由が分かった。この際だ、奴を利用して事にかかろう。そのほうが望む良材を手にすることができそうだ』
 『そうか、そこにあるものを伐って使うといったわけにはいかなかったか。しかし、ものは考えようだ。その方法がお前の言うように我々の望む良材を得る方法かもしれない。オキテスご苦労でした。まあ~、ゆっくり休んでくれたまえ。話はまたじっくり膝を交えてというところだな』
 ガリダとの用件の大略を話し終わった。