『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  301

2014-06-24 07:28:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 スダヌスは驚いた。『これは漁師の漁ではない』と舌を巻いた。
 スダヌスら漁師たちがやっている漁の風景ではなかった。魚がガンガン釣りあがってくる。
 『このありさまは何だ?』驚きであった。彼が想像もしていなかった漁の風景である。彼は、漁師としての認識を変える必要ではなく『これは、認識を変えることを強要されている』その思いに打ちのめされそうになった。
 彼は、彼の一行が、この漁の風景に見入る様子をうかがった。全員が驚きの目を見張っている。開けた口をそのままにしている。彼の息子たちはというと、その驚きようは仰天といったところで腰を抜かさんばかりの風情であった。
 パリヌルスとオキテスは、スダヌスらに言葉の一片をもかけなかった。二人は彼らの驚くさまを見つめるのみであった。スダヌスも二人に声をかけようとはしなかった。
 チョロチョロで始まった漁は、始めてから1時間半の時間が経過している、竿の立ちかたに間が出てきた。アレテスが僚船のギョリダに手信号を送っている。二人の間にOK信号が交わされた。漁の終わりを告げていた。
 アレテスから二人あてに手信号が来る。漁の終了を告げ、島に引きあげると言ってきた。パリヌルスとオキテスはうなづきあった。『いいだろう』と目が語り合う、パリヌルスは、アレテスに了解の信号を送った。
 小島から漁に出て2時間余りの時間が経っていた。漁は終わった。ガラガラ声、饒舌のスダヌスからの声がけがない、無口で引きあげの途についた。
 漁に出ていた者たち全員が浜に帰って来た。パリヌルスら二人は、急遽、アレテス、ギョリダに走り寄り声をかけた。二人の思惑と目的は釣果であった。二人はまず釣果を聞いた。
 『見られた通りです。申し分のない釣果です』
 『ご苦労であった。君らの奮闘に賛辞だ。ようやってくれた、ありがとう』
 『ありがとうございます』
 『今日これからの事は、あとで打ち合わせる、いいな。少々、待っててくれ』
 四人が話し合っているところに、スダヌスが息子たちを連れてやってくる。四人は彼らを迎えた。
 『いやいや、ご一同、皆さんに向かって言葉がありませんな。漁は見事でしたな、素晴らしいというほか何もありません。見事な漁の風景を見せていただいた。全くかける言葉がありませんな。あれこれ言うことより、これこの通り、素晴らしい、見事でした、おめでとう!』
 スダヌスは、アレテス、ギョリダ、パリヌルスらの手を握って、絶賛すると同時に感動を伝えた。