『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  604

2015-09-03 05:41:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『よし、解った。俺が信じているドックスだ。ありがとう。俺が考えていた通りだ。安堵した』
 『オキテス隊長、私が新艇建造の任に就いたことをとても感謝しています。必ず期待にそえるものを造ります。ヘルメス艇はありあわせの用材を使って建造した試作艇です。ヘルメスを超えたいい新艇が出来あがります』
 『ほう、そうか、それは心強い。その一言このうえなくうれしい。三日後の事だが、新艇の価格決めの第1回目の話し合いが、キドニアの集散所で行うことになっている。自信をもって臨めるということだ。ありがとう、ドックス!』
 『はい』
 彼の返事は短かった。
 『ドックス、もうひとつ、二人で確かめたい用件がある。昼めしのあとでだが、時間をとってくれ。建造の場を詳しく見ておきたい。ここでも二つの要点だ。建造の場が、通常考えられる建造の場に比して、よくできているか否かだ。もうひとつは、建造に使用する工具類、釘やその他の消耗品類が揃っているか、それら消耗品類が上質のものを使っているかどうかについて、二人で目を通そう』
 『判りました。私は建造の場にいます』
 『解った』
 二人は朝めしの場に向かった。朝めしを終えたパリヌルスら三人は、イリオネスの宿舎の前に集合した。
 イリオネスが戸口から姿を見せる。
 『おう、おはよう。揃っているな、行くか。今日は、統領の宿舎で話し合う』
 彼らの表情はやや固い、決めた決断を胸に抱いている。足元の確かな歩みで歩んで行く、アヱネアスが宿舎の前で四人が到着するのを待っていた。
 『おう、おはよう』
 『おはようございます』
 『軍団長ご苦労。そこの木立ちの草の上でやろう』
 『判りました』
 ときおり、話し合いをやる木立ちの場である。樹木を裁断した座席が数席ある。五人が思い思いの席に就く。一同が顔を見合わせる。
 『俺からの前置きはない。軍団長、始めてくれ』
 イリオネスは、パリヌルスら三人の目を見つめて口を開いた。
 『前置きはない、即、本題について打ち合わせを始める。いいな』
 三人が異口同音で答える。
 『軍団長、始めてください』
 イリオネスが鋭い目で話し始める、場が引き締まる。パリヌルスらは緊張した面持ちで彼の口元を見つめた。