『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  619

2015-09-24 04:48:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼は言葉を継いで説明する。
 『帆のカタチによる風はらみで船は安定した走りをします。また、三角帆は風の量を多くはらみやすいように造っています』
 『ほう、なかなかだのう!この安定した走りの理屈は何だ?』
 『それについては私どももわかってはいません。帆のカタチ、風はらみ具合であるとしかわかってはいません。三角形に帆は、四角のヨコ帆に比べて、扱いが楽にやれることです』
 『それにしても、走りが壮快といえる』
 『この帆形は革命的といえる』
 『帆のカタチの常識を破っている』
 『中央帆柱に横げたがない、果たしてそれだがな、、、』
 各人が感じたこと、思ったことを言っている。そのような中にあって、テカリオンは、新艇の常識破りの走りを解析していた。
 『こいつら気は確かか?何というものを造るのだ』と内心で感じ考えた。彼は詳しいことを確かめねばならない衝動にかられた。と同時に新艇を買うと心に決めていた。
 試乗会は、キドニアの北の外洋を1時間にわたって西に向けて航走した。驚いたことに南方向はるかにニューキドニアの浜が見える地点までに差し掛かっていた。
 パリヌルスがギアスに声をかける。
 『ギアス艇長、風の読みはどうだ?』
 『北東からの風が弱く感じられます。方向を転換して、南下して海岸に近づけば、風は西風に変わると思います。西風に変わるところまで南下してキドニアに向かいます』
 『おう、それがいい』
 『微風でも三角帆が有効な働きをするか?それについては、俺は自信がない』
 『やってみます』
 パリヌルスは、艇上の一同に声をかけた。
 『皆さん、方向を変えてキドニアに向かいます。帆を下ろして漕走で帰途に就きます』
 艇上に拍手が起きた。
 ギアスは方向転換と帆おろし、漕ぎかたの開始を指示した。艇尾の帆は、西南に向けて吹く風をはらんでいる。ヘルメスは、東南方向に向けて進む、艇の進行方向の維持に役割を果たしているように感じられた。
 ギアスは風読みに集中した。帆柱の先端に結んだ布きれのなびく方向を注視している。海上の風が凪いだように感じられた。即、艇尾の帆も降ろす。
 ヘルメスが漕走で南下し始めて、四半刻(約30分)ギアスは西からの風を感じた。ここでオキテスが考案した造った風風感知器で風力を測った。風に力がない、漕いで南下を続ける、南下といっても東南の方向へである。
 ギアスの読みが当たった、西風が来ている、再度、風風感知器を手にした。