『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  620

2015-09-25 05:00:46 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 西風が来た!風風感知器がいい風力値を示す、間髪を入れず、展帆指示を叫ぶギアス、帆張りは一本のロープを引くだけの簡単操作で完了する。
 一同は、その簡単操作に目を見張る。
 帆は、風をはらむ、帆が艇を引くと感じでヘルメスは波を割って進んだ。順風にしてはやや弱い感がある。
 ギアスは決めた、弱い順風であるが、帆走に切り替えた。ヘルメスは穏やかな走りで波を割って航走した。
 艇上の緊張がゆるむ、言葉が飛び交い始める。
 『四角ヨコ帆より帆面積が小さいように思われるが、風ハラミ効果に遜色を感じない』
 『帆張り、帆降ろしの簡単操作は注目に値する』
 『洋上を走る、航走安定が四角ヨコ帆に比べて、いいと感じる。西に向かっているときの、あの風の強さで、あの航走だ』
 艇上の招客たちの話し合いである、パリヌルスら三人は、話を聞きとっている。彼らからは、論理的説明をしろとは言ってこない、パリヌルスらとて論理については詳しくは解らない。人間が情感で生きている時代である。
 前方にキドニアの船だまりが見えてきた。ヘルメスは船だまりに入っていく、試乗会が終わりに時をむかえた。招客たちが岸壁上に降り立つ、パリヌルスらが丁重に礼を述べた。
 スダヌスが身を寄せてきて礼を言う、ハニタスが来て礼を述べる、ガリダは興奮している、パリヌルスとオキテスの手を握って、目を潤ませて告げる。
 『乗せてくれて、ありがとよ。いや、いい船だ。俺は、感じ入ったぜ!』
 彼は、話を継いで言う。
 『オキテス、集散所の方へ行こう。このあと、ハニタスを交えて、話をまとめよう』
 『おう、判った』
 ガリダは、ハニタスに声をかけて、三者で話し合おうと言っている。二人は承諾した。
 オキテスがパリヌルスとオロンテスに話しかける。
 『ガリダが、ハニタスと俺と三人で話し合おうといっている。俺は行ってくる、オロンテス、同席してくれ』
 『解った』
 テカリオンが三人に身を寄せてきた。
 『お~お、ご一同、ご苦労様ですな、いい試乗会じゃないですか。感じ入りましたな。このようなこと誰もしたことのないことです。話題になりますぞ』
 彼は、三人の顔を見つめて試乗会の催行を褒めた。
 オキテスとオロンテスは、ガリダ頭領、ハニタスらと連れ立って集散所へと向かった。