『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  607

2015-09-08 06:09:54 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは何事にも真剣であり、身命を賭して事にあたった。
 昼めしを終えたオキテスは、ドックスと共に新艇建造の場のチエックを入念に行った。
 新艇5艇の建造の場は、充分な条件で整っている。工具等のそろえにも遺漏はないはずである。釘等消耗品の類のそろえにも申し分がなかった。
 新艇の付加価値構造の創出にも充分と言える条件が整っている。そのうえにドックス以下、各現場の責任者、現場で作業する者たちのモノづくりの気構えができている。
 建造に携わる者たちは、『脚下照顧』と『確かな一歩で前へ』の思慮で行動が律されていた。
 ドックスの船棟梁としての場の構築、備品等のそろえにも非の打ちどころがない。作業の携わる者たちの動きにもそつがないことを確かめたオキテスがドックスに声をかけた。
 『ドックス!ご苦労、完璧だ。申し分がない。そのうえ、お前の新艇建造に関するモノづくりの精神だ。お前という奴は、大した奴だ。この俺は、ガヤガヤ言うだけでお前には及ばん。新艇を完成させてくれ!何でも言ってくれ、それについてはできるだけの事をする』
 オキテスは、ドックスの手を力いっぱいの気を込めて握った。
 『オキテス隊長、その様にほめていただいて痛み入ります。日々、精進に心がけ、いい新艇を完成させます。これだけの新艇建造の場、その他を整えてくださった統領、軍団長、そして、貴方がた一同、この私を新艇建造の任に就かせていただいて、ありがとうございます。感謝と感激です』
 目を潤ませてドックスはオキテスに告げた。
 『ドックス、そんなに感激しなくてもよい。お前という者の持っている資質だ。俺たちも思っている、お前がいてこそ、出来ることだと、感謝するのは俺たちの方だ』
 新艇建造事業の明日の見通しが明るくなりつつある。
 オキテスのまぶたの裏には、日に日にカタチができていく新艇の姿がくっきりと描かれた。
 3日後のカタチが10日後にはこのカタチにと、そして、1か月後に、2カ月後にと、3か月後には、海上に浮かぶ新艇のその雄姿がイメージできた。3カ月の日々をかけて出来あがった新艇が見えた。
 艇上のキャプテンと漕ぎかたたちの声が耳に届き、その姿がまぶたに映じていた。