『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  609

2015-09-10 06:41:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 集散所の新艇トレード担当者らの来訪の朝が明けた。パリヌルスらは、朝の浜で顔を合わせた。
 『おう、おはよう』『おはよう』で始まる。平常の朝と何ら変わっているところがない。
 パリヌルスは、ギアスと昨夕の間に試乗会の件についての打ち合わせを終えていた。
 『なあ~オキテス、考えてみろや、今の俺たちは、歩んだことのない道を歩んでいる。坂もある、分かれ道にも差し掛かる、そうかと思えば、途切れもする。石ころが転がっていれば木の根も地表に出て、行く手の邪魔をする、躓かせる。うす暗い森の闇を抜けると、視界が広がる、明るい青空、たなびく雲、明日が見えてくる』
 『そうだな。お前、結構、繊細でナイーブなところがあるのだな』
 『進んでいく先に結果が見え隠れする、思わず叫びたい衝動が来る、楽しいかといえばそうでもないが、生きている実感を感じる。そんなとき身体に震えがくる。オキテス、力を合わせて歩んでいこうぜ』
 『おう、判っている』
 二人は、互いの心中を確かめた。
 アヱネアスもイリオネスも姿を見せた。パリヌルスら二人を見て朝の挨拶を交わす。
 『おう、パリッにオキテス、おはよう。お前ら朝行事終えたのか』
 『はい、おはようございます。終えました』
 『おう、今日、集散所から人が来るのだな。予定、段取りはどんな具合になっている?』
 『今日、集散所から新艇トレード担当者らが来ます。到着次第、統領と軍団長を呼びに行きます』
 『ほう、そうしてくれるか、了解した』と答えて、海に足を入れていく。
 彼らは、朝めしを終える、少々の間を過ごす、業務開始の時が訪れた。
 各部署が朝礼と思しき礼を交わして業務がスタートしていく、浜がいちどきに活性を呈する。一艘の船が漕走で浜を目指してくる。
 見張りが目にとめる、伝令が走る、パリヌルスとオキテスが渚に立つ、オロンテスも並んで立った。統領と軍団長に伝令を走らせる。彼らは来訪者を迎えた。
 彼らは、海の浅瀬に降りる、浜に向かって歩む、オロンテスが前へ進み出て一行を迎えた。
 『お~お、ハニタス殿、ようこそ、おいで下さった。待っていました。どうぞこちらへ』と案内して、パリヌルスとオキテスを紹介した。
 一行は、ハニタスとテミトス、もう一人随行者がいた。パリヌルスらとハニタスらも互いに名乗りながら、自己紹介して『よろしく』と顔合わせの握手を交わした。
 統領と軍団長が姿を見せた。オロンテスが紹介の労につとめた。
 統領がハニタスに声をかけた。
 『おう、ハニタス殿、久しぶりです、達者でしたかな。その節には、大変に世話になりましたな、如何です?あのころから時を経て浜も変わりました』
 『いやあ~、見て、驚いています。あれから、この浜がこのように変わるとは思いもよらないことです』