『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  616

2015-09-21 04:51:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ギアスがパリヌルスに話しかける。
 『隊長、午後の風向きは、この方向からの風が多くなります』と手をかざす。
 『その時点で風を読んで進路を決めてやりたいと考えます。任せていただけませんか』
 『そうか、解った。実行計画だが、帆走距離をできるだけ長くして海上を帆張りで走ってくれることを希望している。ヘルメス艇の走行安定性及び艇の簡単操作性を乗艇者たちに伝えたい』
 半拍間をおいてギアスが答えた。
 『解りました。そのことについてはうまくやります。任せてください。今日は、天候のくずれはないと考えられます。海もいい状態が続くと予想しています』
 『おう、判った』
 ヘルメス艇は、キドニアの岸を離れてかなりの沖合い地点にいる。いい追い風が吹いてきている。快走している、申し分がない。初夏を感じさせる陽射しが心地よかった。
 『ギアス!ヘルメスの状態のチエックが終わった。船だまりに帰る』
 『判りました』
 パリヌルスは、艇上の全員に声をかけた。
 『頃合いは早いが腹ごしらえをする、早昼めしだ。いいな。ところで、一同に伝える』
 彼は一同と目を合わせる。
 『今、我々は、新艇を建造している、判っているな。お前らが乗っているこのヘルメスと同型の新艇だ。今日、この新艇のトレードに携わる関係者を招いて試乗会を行う。招いた人たちに好印象を与えるように心配りをしてくれ。新艇は、走行安定性と簡単操作性を売りにしている。それをその人たちに強く印象付けたい。頼むぞ!いいな』
 『ワオッ!』一同が喊声をあげた。
 ヘルメスは船だまりに帰ってきた。パリヌルスは、その船だまりに碇泊している、見たことのある一艘の交易船に目を止めた。
 『奴が来たか』
 その船は、交易人テカリオンの船である。彼は心のうちに好事の重なりを覚えて身が震えた。
 一同は、岸壁の上に車座に腰を下ろし場をとり、早昼めしを終えて、出航の時の来るのを待った。
 オキテスが帰ってくる、連れがいる、ガリダ頭領と二人の手下たちである。パリヌルスが一行を迎えた。
 『ガリダ頭領、ようこそ!』
 『おう、パリヌルス、元気そうだ、何より何より。新艇の試乗会とはな、こんな催しははじめてだ。乗せてもらうぞ!俺の評価は辛口だぞ、いいな』
 『判っております。ガリダ頭領、昼めしは?』
 『お前、よう聞いてくれた、ありがとよ、腹ペコだ』
 『ガリダ頭領、こちらへ。連れの方も、どうぞ!』
 パリヌルスは、スペッシャルパンにささやかな副菜をそえて、ガリダ頭領たちに手渡した。