『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  606

2015-09-07 05:19:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスが口を開き声を出す。
 『これで懸案の解らないことだらけの新艇の価格決めの目途がついたというものだ』
 オキテスの表情に生来の明るさがよみがえってきていた。
 彼らにとって決断次元の高いと思われる決断が瞬時といってもいい短い時間で決まった。狂いのない即刻の決断が事業のサクセスを約していた。
 彼らに訪れたのはふしぎな感動の波動と衝動である。「そうせずにはいられない」といった衝動が握手という行動に駆り立てた。五人が手を握り合った。打ち合わせの終結に握手を交わす、強い想いに血が通う、一同に興奮が渦巻いた。
 彼らは決めるべきことを決めて散会した。
 『おう、オキテスにオロンテス、昼めしまでに少々間がある。打ち合わせの事をまとめておきたい。先ず、明日の事だ。用材の事、建造の場の事だが、我々三人が立ち会う、俺はそのように段取りしている。オロンテス、お前の予定が解っていない』
 『俺の明日の予定はだ、アレテスのキドニア行き第2便で集散所に行く、それまで、彼らの来訪に立ち会う予定にしている』
 『解った。顔つなぎの事もある、オロンテス、それで頼む』
 頷くオキテス。『おう、判った』と答えるオロンテス。三人の気持ちがひとつに集束された。
 浜にアレテスの舟艇が着いた。
 『では、俺は行ってくる』と行ってオロンテスはアレテスの舟艇に乗り込んだ。二人はこれを見送った。
 『おう、パリヌルス、昼めしにしよう』
 二人はそれぞれの持ち場へと向かった。
 パリヌルスは思案した。試乗会をいつ、どこで、どのようにやろうかと思案した。
 まず関係者連を招いて、試乗会をしなければと考えた。それも第一回の価格決め会合を控えての急務であると条件づけた。彼は決めた。
 関係者を招いての試乗会は、第一回価格決め会合の前日とした。明後日の実行である。帆装は新しい帆でやると決めた。実行内容についても決めた。
 告知は、明日来訪するハニタスらに伝える、ギアスとの打ち合わせは今夕に行う、胸に熱い想いを煮えたぎらせて、試乗する者たちに伝える内容を練り上げて、実行計画のカタチを描いた。
 彼は、新艇の優れた性能、簡単操作に重きをおき、新しい櫂のカタチをも伝えることにした。