メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

対決 巨匠たちの日本美術

2008-07-11 21:51:47 | 美術
対決 巨匠たちの日本美術」(東京国立美術館平成館、7月8日~17日)
 
これまでなかった企画である。そしてこの博物館所蔵品の中から選んだものと思っていたらそうではなくて、他の館や寺院などからも集められている。
ほとんど国宝、重要文化財、またはそれに近いクラスであって、11組の対決ならぬ対照は、どこかで見たものの再確認にしても、啓蒙にしても、これは時々してほしい企画だ。これに行き当たった観光客特に外国人は幸運である。
 
もちろん、この組み合わせには異論もあろうし、どうしてこれが入らないということもあるだろうが、それは次回に期待しよう。
 
これらの中で、予想どおりのものもあるが、対決という形で配置されると、やはり表現として強いものに感銘を覚えてしまう。それは本質的ではないものではあるのだが。
例えば、長谷川等伯に対する狩野永徳で、この二人は現実に対決したわけであって、等伯の方が繊細で深いとは思うものの、こうし永徳の代表作いくつかを目の前に並べられたときの幸福感は他のものとは比べがたい。その絶妙な配置、豪壮、デフォルメ、見事なものだ。
 
そして焼き物も、長次郎、光悦、仁清、乾山と、数も多すぎず、その特徴を味わうに不足はない。この眼で見る仁清の色はやはり素晴らしいし、じっくり見たことのない長次郎は、これが日本のわびかとなんとなくわかる気がする。
 
そして、円山応挙、長沢芦雪、これらはまさに解説にあるとおり、背景の物語抜きに、絵として、その面白さとして独立していて、今日の日本のアートにつながっている。芦雪の虎!
それに加えて曽我蕭白だが、この人のものを見た記憶はない。対決している若冲はこの20~30年で高い評価を得たもので、その力はすごいけれど、こうして蕭白を見ていると、驚くほどシュールで今日のマンガなどの源流となったであろうこれらいくつかの絵には圧倒される。
 
我が国には、かくも面白い、まさに今日的な意味のアートがあったのだ。

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