「天然コケッコー」(2007年、121分)
監督:山下敦弘、原作:くらもちふさこ、脚本:渡辺あや
夏帆、岡田将生、夏川結衣、佐藤浩市
山村の小学校と中学校あわせて6人、そこに家族がわけありで東京から男の子が転校してくる。中学2年生で、主人公の女の子(夏帆)にとっては初めての同級生だ。
物語は中学2年夏から高校入学まで、子供達のあいだの、大人たちもまきこんだ日常、小さなトラブル、二人の恋心、生徒二人と先生たちの東京への修学旅行などを、淡々と描いていく。
この映画が他と違うのは、いくつかの兆候から一つの大きな結末に突き進むことがなく、一つ一つの問題についてテンションが高い場面には移らずフェードして次の場面になり、見ているものはその結果を自然に知るという手法を多用していることである。
その結果は、この世の中の多くのひとたちのケースでは受け入れられるものであり気持ちのいいものである。しかし、それだからストーリーとして平凡でつまらないということはなくて、最後まで見てしまうのである。
知らなかったが、この原作はかなり人気があった連載コミックで、そこでは村の多くの登場人物に多彩な役割が振られているらしい。そうであれば、こういうエピソードの連鎖ということも肯ける。
クレジットを見て気がついたのは、脚本があの「ジョゼと虎と魚たち」(2003)、「メゾン・ド・ヒミコ」(2005)などの傑作をものした渡辺あや、ということ。
前二作ほど才気ほとばしるという感じでないのが、むしろこの人の力を感じさせる。
夏帆はほぼ主人公と同年齢、こういうチャンスにめぐり合ったことが今後どう生きるか。
登場人物からよく出てくる「おおきに」から、京都に近い日本海岸を想像したが、原作もロケも島根県浜田市付近のようである。