メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

近代日本の巨匠たち(出光美術館)

2008-09-18 18:52:10 | 美術
近代日本の巨匠たち」 出光美術館(丸の内)(9月6日~10月26日)
 
出光コレクション(丸の内、門司)によるもので、日本美術のなかでもかなり渋い趣味という印象をもっていた館の展覧会としては、興味を持って見ることが出来た。
 
上村松園、月岡芳年の数枚を見ていると、日本画、特に女性を描いたものは欧州のものとは根本的にことなり、またそれがいい、ということがよくわかった。
 
つまり、写実でもなく、決まった寓意があるのでもなく、おそらく現実に観察はするものの、描いている中で理想のかたち、姿を見つけるということなのだろう。こちらも絵をみる以外になく、短い言葉で説明できるものではない。
先日とりあげたミレイ展、後期のいくつかにも決まった絶妙なポーズと表情があるけれど、こちらはタイトルなど言葉がずばり対応するものだ。
 
上村松園ではポスターにもある灯(1937)もいいが、若いころ(明治時代)の四幅対の春夏秋冬は、そういうプロセスの中にも勢いがあって見事である。
 
張果像(平櫛田中)はなんとも形容しがたい。見てまさに、この仙人はそうなのか、と納得するしかない。
富岡鉄斎もこうしてまとめてみると、豪快から融通無碍、ユーモアまで、よくわかるし、落款の斎の字が同じでないのも面白い。
 
陶磁は板谷波山と富本憲吉の対決ともいうべきもので、名前は知っているもののこれまであまり注意して見てこなかった二人の対照が、理解できた。
どうも富本は折衷に留まっているという印象が最後までぬぐえない一方、板谷は一つの世界を作り出した、近代では大変な作家の一人という観がある。
 
併設の仙厓展はコースの途中に組み込まれている。いくつかは写真で見たことがあるこのほほえましい墨絵、ここで一休みもできて、いい企画だった。

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