メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

エディット・ピアフ~愛の賛歌~

2008-09-20 22:51:03 | 映画
「エディット・ピアフ~愛の賛歌~」(Môme, La  2007仏・英・チェコ、140分)
監督:オリヴィエ・ダアン、撮影:永田鉄男
マリオン・コティヤール、シルヴィー・テステュー、ジェラール・ドパルデュー、ジャン=ピエール・マルタンス、マルク・バルベ
 
エディット・ピアフ(1915-1963)の生涯を、比較的短い場面をつなぎ合わせて作ったもの。初めは幼児と死の少し前、そして二つの時間が次第に近づいてきて、中盤からは、歌そして愛したボクサーとの話が中心となっている。
 
貧しい不幸な生まれと育ち、そしてどうにもならない人生、男そしてくすり、「でもいつも彼女には歌があった」というのはよくある表現である。古今東西ある。ちなみに彼女とビリー・ホリデイは同年の生まれだそうで、映画の中でピアフがそう言っている。
 
まさしくそうなのだけれど、でもそれはたとえようもなく孤独でつらいものではないだろうか。どんなになっても歌はあり、彼女の歌は皆が絶賛する。それがなんだろう、愛する男は死んでしまった、、、
それを象徴するように、中盤の成功を勝ち取る舞台のシーンで、ダアン(監督)は彼女の歌の部分だけをサイレントにする。細工が過ぎるともいえようが、映画全体から見れば見事だ。
 
ピアフのマリオン・コティヤール、メイクもそして確か小柄なピアフそっくりに見せるため演技、カメラも工夫したのだろうが、なりきっている。そのコティヤールをドキュメンタリー式に撮って編集した映画、のように見える。
 
それでも、これでオスカー取ったのも、悪くはない。
 
恋人のボクサー役ジャン=ピエール・マルタンスが、うまいとかどうとかいうよりいい男である。こういうのは配役の妙である。
 
有名人も出てくる。マレーネ・ディートリッヒ、雰囲気が出ている。
そして、戦時の出征前日にピアフに曲を持ち込む兵士、晩年に来た若いシャルル・デュモン、こういう人はたくさんいたのだろう。それを一応きいてあげるのは、女性の大歌手が若い男性の歌手や作曲家を見出し、サポートしたといわれていることを実証している。彼女たちは彼らを恋人にしていたことも多かったらしいが、そうして多くの才能は世に出た。
 
この映画でも、フィナーレ近くで、よろよろの状態でようやくオランピアに立ったピアフが歌うのは、シャルル・デュモンがそうして持ち込んだ「水に流して」だ。
 
ピアフは随分老いた姿のイメージがあるけれど、40代で死んでいるのは意外であった。
 
それにしても、1960年代~1970年代、つまりLPの時代は、シャンソンのアルバムもたくさん紹介され、耳になれた曲も多かった。この映画の時代はその少し前、この時代のフランス語は心地よい。

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