メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

鴨居玲展(没後30年)

2015-06-09 22:00:56 | 美術
鴨居玲 展 踊り候え 没後30年 北陸新幹線開業記念
2015年月30日(土)~7月20日(月) 東京ステーションギャラリー
 
鴨居玲(1928-1985)の名前は5年ほど前までまったく知らなかった。石川県立美術館を取材で訪問した際、ここで県にゆかりのある作家の作品を意識して収蔵しており、またその画像をデジタルアーカイブとして館のサイトで、まだ著作権がある時期にレイ公開することを遺族におねがいしているとのことであった。その中で鴨居玲は若い人たちに人気があるとうかがった。(特に大作「私」)。
 
今回こうしてその全貌を見ることができるのはうれしい。自分の眼とそれで見たものの表出について、確かなものをつかんだ画家だということが理解できる。自身を含め、人が生きていくことの苦しみ、胸の中を吹いていく風、それは時間だろうか、そういうものを、暗い色、教会の絵などで特徴的なグリーン、朱に近い赤などで、独特なタッチで見せる。
未完で今回初公開の「私の話をきいてくれ」、なんともいえない、、、
 
濃い表現が多いが、何か重量がないというか、ふっと浮いたような感じがいい。酔っ払いの絵も多いけれど、それはそこで際立つ。
その浮いているような感覚はどこかグレコに通じると思っていたら、ある時期スペイン、ポルトガルなどで描いていたようだ。
57年の生涯は長くないが、描き切ったといえないことはない。
 
さて東京ステーションギャラリーは新装なってから3回くらい行ったけれど、新しい駅の中という制約のせいか、動線がうまくなくて、ちょっと疲れる。しょうがないといえばそうだが。
 
このギャラリー、今回は北陸新幹線開業記念、石川県出身の画家を取り上げたが、これまでもJR東日本からつながりがいい地域出身の河野通勢(群馬・長野)(1998年)、佐藤哲三(新潟)(2004年)などなかなかいい企画があった。日本の画家の回顧展を今後もこのようにやってくれるといい。

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