「マグナムが撮った東京」(東京都写真美術館、~5月6日)
写真家集団マグナムが結成されてから60年、この記念もかねて1950年代から10年ごとの区分で、ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ・ブレッソン他海外のカメラマン、日本人では濱谷浩、久保田博二、などによる東京を撮った写真展である。
見るほうも撮られた時期に生きており、その時代の風俗、雰囲気を多少は共有している写真をまとめてみると、単なる懐かしさではなく、いろいろ不思議な思いにとらわれる。
1950年代など、まだ決して豊かではなかったという記憶はあるが、こうしてみると後の時代より、人々の顔が生き生きとしており、またしっかりしている。例えば有名な「銀座の花売り娘」(1951、ワーナー・ビショフ)など。
また明らかに、東京オリンピック(1964)の前後で東京は変った。
オリンピックの後はくったくがない良さはあるものの、以前の方が人々の内面と外面のバランスがとってもいい。それは写真というものの、ある程度が経った方が見るものに定着して受け取られるという、これは自論に過ぎないが、そういうこともあるのかもしれない。
それにしても感じるのはモノクロの力である。ラティテュード(ダイナミック・レンジ)が広いということなのか、とにかく表現力がすごい。例えばデモ風景にしたって、カラーだと何か印象が定まらない。そういえば昔の記念写真がカラーだったらと悔やんだりしたことはこれまでない。
全体にレベルの高い写真ではあるけれど、1970年以降の東京ということになると、荒木経惟や森山大道の方に惹かれる。そう気づくと、近年の東京における様々な対象とこちらとの関係、距離がわかってきて面白い。
何ヶ月かぶりにこの館に行ったが、平日にもかかわらず来館者も多く、またその周辺も含め、写真の文化、写真が好きな人たちの雰囲気がより感じられるようになってきたのはうれしい。