没後10年記念 パリ・オペラ座バレエ「ジェローム・ロビンスへのオマージュ」
ジェローム・ロビンス(1918-1998)の没後10年にあたる2008年、パリ・オペラ座で行われたもの。
(20012年2月 NHK BS で放送された)
ジェローム・ロビンスの振付をもとにしたものが三曲
「イン・G・メジャー」(ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」
「イン・ザ・ナイト」(ショパン)
「コンサート」(ショパン)
ロビンスに大きな影響をうけたというバンジャマン・ミルピエ振付による
「トライアド」(音楽:ニコ・ミューリー)
コーエン・ケッセルス指揮 パリ・オペラ座管弦楽団
ロビンスの振付を意識してみたのは「ウェストサイド物語」だけだから、今回こうしてみると、クラシック音楽ファンが自然に入っていける作品を残していたのだな、というのが発見であった。そしてどれもがドラマティックというよりは、ゆったりと楽しめるものになっている。
ラヴェルはこうして見るとまさにバレエになって不思議はないし、ショパンの音楽はこれまでにもいくつか作品があって、彼の作品も人気があるようだ。考えてみればバレエの世界の人たちに一番身近な楽器はピアノである。
「コンサート」は、劇場に来る様々な人たち、その思惑と動作がコミカルに表現され、また舞台で実際にピアノを弾く奏者もなかなか達者な演技を見せる。この作品は、いい意味でアメリカのセンスだろうか。
「イン・G・メジャー」の1楽章と3楽章は群舞で、その衣装は白にパステルカラーのボーダーが入ったものが何色か使われている。この衣装でロビンスの出世作である映画「オン・ザ・タウン(踊る大紐育)」の水兵が連想されることをねらい、オマージュのはじまりを宣言した、と推測する。
放送ではこのあと、
ニューヨーク・シティ・バレエによる「ニューヨーク・エクスポート・オーパス・ジャズ」(振付ジェローム・ロビンス、音楽ロバート・プリンス)が、映画スタイルで放送された。
これは、主に屋外、街路、郊外など、「ウェストサイド物語」を彷彿とさせるもので、群舞でも劇場と違って、あまりピタッと合っていない、つまり練習途中くらいの感じが効果的なように感じられるところが面白い。
こうしてみると、その後のダンスの振付は、随分多くのものがロビンスから来ていると思われる。ニューヨークのものなど、このあとマイケル・ジャクソンまでつながっているのだろう。
さて、これらの作品はいつごろ作られたものだろうか。先に「ジェローム・ロビンスが死んだ」(津野海太郎著)で取り上げたように、彼は戦後しばらく赤狩りでつらい目にあっている。しかしここのパリ・オペラ座のものにそのような影は感じられない。
まだよくわからないが、「コンサート」は1956年らしく、そうであれば「ウェストサイド物語」とほぼ同時期で、少し落ち着いてきたところかもしれない。