「今日のあれ、凄かったなぁ」
「……?」
ソファに二人で並んで座り
お酒を飲みながらまったりと過ごす時間。
思わず今日収録した番組を思い出しそう呟くと
智くんが不思議そうな顔で見つめた。
「いや、あのクリフクライムさ」
「ああ~。やっぱアスリートの方は違うよねぇ」
「……まあ、ね」
確かにアスリートの方は凄いけどそうじゃない。
相手の方々はそれが本職だしそれに実績もある。
そして日々それ相応の訓練をしている人だ。
普段、特別な訓練や練習をする事無く
毎日自分と同じように忙しく過ごしている智くんが
そのアスリートの方と同じようにできてしまえる事が
純粋に凄いと思った。
あの体力も筋力もそしてセンスも要求されるのぼり方。
あのアスリートの方のやった正面からのぼる方法は
決して誰にでもできる訳ではない。
でもニノも松潤も次にのぼるのが智くんだと分かっていたから。
そしてできてしまえるだろうという確信があるからこそのあの前フリ。
本当はああいう風に面白おかしく言っているけど
あれは絶対的に智くんができるという事が
確信できているからこその前フリだったんだよね。
それだけ信頼されていてそして見事にやり遂げてしまえる
智くんがやっぱり凄いと思った。
しかも軽々とやってしまえているし、ね。
本当は凄い事なのにそう思わせないように
簡単にやってしまえるところがまた凄いところなんだよね。
本当に昔から身体能力が高くて能力とセンスを
兼ねそろえた人だと思っていたけど。
そして何でもできる人だとも思っていたけどやっぱり凄い人。
こんなに食も細くて華奢な身体をしていているのにその力は
どこから湧いてくるんだろう。
「……智くんって本当に何でもできるね?」
「え~? 翔くんの方が何でもできるじゃん」
智くんにそう言うといつもそう言ってくる。
「いや、そんな事ないよ」
「そう?」
「うん、そうだよ」
智くんは意外って顔をする。
本当に自分の凄さを全くわかってない。
「それに、俺は絶対にあんな風にのぼれないよ」
「ふふっ。そうかなぁ?」
「そうだよ、あのあごの部分じゃなくても
普通に上にのぼっていくのだって正直言って微妙だしさ」
そう言って自分自身に苦笑いをすると
智くんはおかしそうに声を出して笑った。
智くんはいつも自分の方ができる人だと言ってくれるけど。
そして世間でもそう思われているけど本当は違う。
確かにキャスターをやってたりして社会面、勉強面では
強いかもしれないけど自分としてはその智くんの
秘められた能力にいつも感心させられている。
きっと智くんにそう言っても大したことじゃないのにって
顔をされてしまうと思うけど、ね。
でも。
いつもその秘められた能力を知るたびに惹かれていく。
もう人生の半分以上一緒に過ごしているというのに
それはとどまるところを知らず今もまだその能力を知るってところが
本当に驚きなんだけど。
その秘められた才能はどこまであって、そしてどこまでいくのだろう。
「その才能を一つ分けてほしいよ」
「え~?」
歌も演技もダンスも
そして絵や字などの芸術面も
そしてその今なお衰えを知らない身体能力も。
本人は何が?って顔をして、え~って言ってるけど
その才能の凄さに気づいていないのは本人と
そして本当の智くんを知らない人だけだよね。
そう思いながら無邪気に笑っている智くんの顔を見つめる。
「翔ちゃん酔ってるの?」
才能を一つ分けてほしいと言った言葉が余程ツボにはまったのか
クスクス笑いながら酔ってるの? なんて可愛らしい顔で聞いてくる。
「まぁね」
「ふふっ。珍しいね~」
そう言って抱きついてきたかと思ったらチュッと頬にキスをして
可愛らしい顔で微笑んできた。
“可愛すぎる”
そう。
たぶん酔ってる。
智くんの才能を知れば知るほど。
その能力にふれればふれるほど。
智くんに酔っている。
そう思いながらその身体を優しく押し倒す。
智くんはまっすぐな視線で上を見上げる。
視線が合うと智くんはふふっと可愛らしい顔で笑う。
「翔ちゃん、酔ってるね~」
「うん、酔ってるよ」
智くんが酔ってるねって可愛らしい顔で言ってきたから
そうだと答えたらふふっと笑う。
そのまま顔を近づけていってちゅっと触れるだけのキスをする。
そしてその綺麗な顔を見つめると智くんが
お酒のにおいがすると言ってまたその可愛らしい顔でふふっと笑った。
だから智くんもね、と言ってお互い見つめあったまま笑いあう。
そしてゆっくりと唇に唇を重ねると智くんの腕が背中に回ってくる。
そう。
酔っている。
智くんと出会ってからずっと
智くんに酔っている。
そう思いながらそのまま深いキスをした。