yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

ALL or NOTHING Ver.1.02 5

2015-12-04 16:52:00 | ALL or NOTHING Ver.1







「櫻井は何が楽しくてここにきているんだろうね?」

「……はい?」

「いや、最初無理やりここに来させた俺が言うのもなんだけどさ
何か不思議だなぁって思って」

「……え?」

「女の子と楽しんでる訳でも、踊ってストレス発散させてるって訳でも
酒や音楽を満喫しているって訳でもないじゃん?」

「……」

「そもそもこういう場所好きじゃないっしょ?
それなのになんでいるんだろうなぁってさ。
それとも何か他に目的があんのかなぁって」

「……」



そう吉田さんは不思議そうに言うと、ふふっと笑った。











そう。




確かにこういう場所は好きじゃない。


大学時代に何回か来たこともあったけど


付き合いできただけだ。





でも今は



自分自身の意思で、ここにきている。



ここにくる人達とは違う目的で。





そう。



あの少年を見るために。









あれからもずっと少年の事を見ていた。


むっとした顔をされながらも


目が合うとぷいっと顔を背けられても。


その綺麗な顔。


ダンスを踊る姿。


話しているところ。


飲み物を飲んでいるところ。


ぼんやりしている姿。くつろいでいる姿。





嫌がられても


文句言いたそうな顔で見られても


ずっと見ていた。








だから、すぐに気が付いた。









少年のちょっとした異変。





「……」


って、我ながら重症だなと思う。


どれだけあの少年の事を見ているのかと。


そして、どれだけあの少年の事を気にしているのかと。


何だこの気持ち?


自分でもよくわからない。









でも。



いつもと違うその少年の様子。



それが無性に気になった。





顔がどことなく紅潮していて、いつもよりもぼーっとしているように見える。
そして、いつもより目が潤んでいるような気がする。


気のせいなのだろうか。
そんな事を思いながら見つめる


やっぱりおかしい。
あの感じ。


あいつ、もしかして熱があんじゃねえの?


何こんな時にまでここにきてんだよ。
別に楽しそうに過ごしているわけでもないのに
全く帰る気配もねえし。


そう思いながらその少年の事を見つめた。











「……」


間違えない、やっぱり熱があるみたいだ。
ふらふらしているし顔も赤くなってきている。


何で帰らねえんだよ、あいつ。


どう見ても楽しくてここにいたくてたまらないからいる
という感じでもないのに、ここにいる理由がどうしてもわからない。


かと言って熱があるみたいだから帰りなさいとも言えない。
少年の顔は知ってても所詮は他人。
友達でも仲間でもない。
まして名前さえも知らない。




でも。




あのほんのり紅潮しているその顔。
どうしても気になって、その姿が目に入る。


体調もあまり良くないのだろうか。
辛そうな表情をしている。
何でそんな思いまでしてここにいるのかやっぱり分からない。


前にここにいるべきじゃないといった時
何も知らないくせに、と少年は泣きそうな顔をしていた。


その事と何か関係があるのだろうか。









何も知らない女性たちが相変わらずひっきりなしに話しかけて
一緒に踊ろうと言ってくる。
でもとてもそんな気になんてなれない。


そして少年を見ると、やっぱり様子がおかしい。


おせっかいだと何だと言われても
こんなところにいないで早く家に帰った方がいいと
その腕をつかみ少年を説得したい衝動にかられる。


でも、そんな事を言ったところで反発し嫌われるだけだろう。
どうしようか。


その具合の悪そうな少年の事を見つめた。


いつもは遠くからそっと眺めるだけだったけど
だんだん具合が悪そうになっていく少年の姿に
いてもたってもいられず思わず近づいていった。


少年はいつもは、むっとした顔をして睨んで来るのに
今日はその元気もないようで自分の存在に気付いても
ぼんやりこちらを見ただけだった。


やっぱり具合が悪いのだろう。


近くにはいつもの高校生の友達も一緒にいた。







そうこうしているうちに少年の顔が見る見るうちに
悪くなってきて、唇の色が真っ青に変わっていくのが分かった。


やばい!


ふらふらしていて今にも倒れそうなその少年の腕を掴んだ。


「具合悪いんでしょ?」


そう少年に言った。
いつもだったらここで関係ないだのなんだの文句を言われるところだ。
でも返事はなく少年の顔を見ると、唇が紫色になってきて震えていた。


やばい。多分熱が出る前の兆候だ!


高校生の友達がどうしたのかと近寄ってきた。


「具合悪いみたいだ。早く家に帰らせた方がいい」


そう、その少年の友達に告げた。
でもその友達は、無理だと首を振る。


「何で?」

「おおちゃん、今家に帰れないと思います」


帰れない?
帰れないってどういうこと?
意味わかんない。


「でもこのままだと間違いなく熱が上がる。
一刻も早く布団に寝かせた方がいい」

「でも……」


少年の友達がどうしたらいいのかと戸惑っている。
そうこうしている時に少年の身体がガタガタ震え出し
寒いと言い出した。


「一刻も早く帰らせて寝かさないと。この子の連絡先は?」


そう聞くと、少年の友達は困った顔で知らないと首を振る。
どうしたらいいのだろうか。


「……うちに」

「……」

「取り敢えずうちで寝かせよう。
寒気がきているから早く布団で寝かしてあげないと」


とっさにそう口走った。


少年の友達が、でも、と悩んでいる。


確かに知人でもない自分のところに来るのは不安だろう。
でもこのままここにいさせるわけにもいかない。
少年の唇は真っ青だ。


「心配だったら君もうちに来たらいい。
ここから駅2つ分だからそんなに遠くはない。このままタクシーで行こう」

「でも……」


明らかに戸惑っている様子だった。
まあそうなるのは仕方がない。でもそんな事を言っている暇はなかった。
少年の顔が真っ青になり全身に震えがきていた。


「どうする?
この子の家にも君の所に連れていくわけにもいかないんだろう?
この子とはちょっとした顔見知りだから心配しなくていい。
悪いようにはしない」


そう少年の友達に告げた。


何の事情があるのかはわからないが
この子は家に帰れないという。


そして友達もここにいるってことは
その子の家に行くって訳にもいかないって事なんだろう。
もう自分の家に連れていくしかない。そう思った。


少年の友達は少年の様子を見て、自分ではどうすることもできないと分かったのだろう。
わかりました一緒に行きますと言って、荷物を取りに走っていった。












すぐにタクシーを捕まえ家へと向かう。


少年は寒い寒いと震えている。
多分これからどんどん熱が上がってくるのだろう。
上着を脱ぎ少年にかぶせ一刻も早く家にと願う。


少年の友達も心配そうに見守っている。



「……」



それにしても。


この時期のこの症状。
もしかしたらインフルエンザか?
自分自身一昨年の丁度この時期にインフルエンザにかかり
大変な目にあった事を思い出す。


あの時、最初はぼーっとして身体が熱いなっと思っていたのに
だんだん寒くなってきてしまいにはガタガタ震えが来て
そのあとに40度くらいまで熱が上がった。
熱だけならまだしも頭痛と身体の節々の痛みで辛い思いをした。


薬を飲んで症状は楽になったけど2日間高熱が続いて
しんどかった事を覚えている。


インフルじゃなければいいが。


そう願いながらも、こんな状態でも家に帰ることができないなんて
どういうことなんだろうかと考える。


そして、もし自分が気付かなかったらこの少年は
一体どうなっていたのだろうとも思った。










部屋に着くとすぐに少年をベッドに寝かせた。
寒い寒いと訴えてくるから暖房をつけ布団を2重にかける。
友達も心配そうに様子をうかがっている。


身体はどんなに暖房をつけても布団をかぶせてもガタガタ震えている。
本当は家にいた方がどんなにか安心して眠れるだろうに
そう思うとその少年が不憫に思えた。


その苦しそうに眠る少年の顔を見つめた。


相変わらず綺麗な顔をしているが身体が辛いのだろう。
少年は苦悶の表情を浮かべている。


まだ高校生。
親が必要な時期だ。
なのに家に帰れないってどんな事情があるっていうのだろう。


辛そうにベッドに寝ている少年の顔を見つめた。








しばらくして身体の震えがおさまってきたと思ったら
今度は少年の顔がどんどん紅潮してきた。


ああ、熱が上がるんだな。


そう自身の経験からわかった。
この後ガンガンに高い熱が出て身体中が痛くなって
しんどくなってくるはずだ。
汗もたくさんかくし体力も消耗する。


どうしよう。


取り敢えず水分だけはマメに取らせて、着替えとタオルを準備しておくか。


両親にも連絡をしておいた方がいいのだろうが
少年の友達もわからないというし
症状が落ち着いたら本人に聞くしかない。






って名前も知らない高校生相手に何やってるんだろうな。


少年や少年の友達まで家に連れてきて。
ベッドに寝かせて。
着替えやタオルを準備して。
こうして看病までしている。


名前さえ知らない少年に。


自分でもその行動におかしくなってきた。


少年の友達を見ると、疲れたのかベッドの横で寝てしまっている。
まだ高校生だもんな。


そう思いながらその身体の上にブランケットをかけ
ふっとため息をついた。









朝になると少年の友達は帰らなくてはいけないと言って
智の事よろしくお願いしますと帰って行った。


この少年、智って言うんだな。


その時初めて名前が分かった。


残された少年と二人。
少年は、あの後2回大汗をかいたので
その都度身体を拭き着替えさせた。


今はすうすうと安心したように寝息を立て眠っている。
たくさん汗をかいたせいか熱は落ち着いてきたようだ。


インフルじゃなかったのだろうか。
このまま熱が落ち着いていればよいけど。
そう思いながらその寝顔を見つめた。









って本当に自分は何しているんだろうかと思う。


あの時、今にも倒れそうな少年を二人がかりで抱え
吉田さんに先に帰るからよろしくと告げ
そしてタクシーをつかまえ必死に二人で部屋まで運んだ。


そして上着を脱がしベッドに寝かしつけた。
少年はよっぽど体調が悪く、また意識も朦朧としていたのだろう
言われるがままにベッドに横になった。


布団を2重にかけ暖房をつけ時々目が覚めると水飲ませた。
そして大汗をかくと着ていた服を脱がしその身体を拭き
そして新しいシャツに着替えさせた。


弟がいたので慣れない事ではなかったが
とにかく無我夢中だった。










そして、今。


やっと我に返る。


「……!」


あの少年が自分のベッドに寝ている!


自分でやった事とはいえ、とても信じられない。


いつも見ていた少年がここにいて


自分のベッドですやすや眠っている。


ただ早く寝かせなければと


それだけの思いで必死だったとはいえ










あの少年が





智が








自分のベッドで眠っている。


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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
月のうさぎさんへ (きらり)
2015-12-10 21:26:29
月のうさぎさん、1にコメント下さっていたのですね。
ありがとうございます♪
1にもコメントしたのですが念のためこちらにも。
楽しみと言って下さってありがとうございます♪
明日続きアップします♪
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桃さんへ (きらり)
2015-12-08 17:53:47
桃さん、コメントありがとうございます。

はい。距離が少し縮まりました♪
でも今回は社会人と高校生なので展開がかなりゆっくりですね~。
翔くんって面倒見がよくて凄く優しい人ですよね。
いつもメンバーの事をよく見てたり見守っていたり。

そんな翔くんと(ビジュアルは大学を卒業したくらい)と
ALLの智くんでイメージしてるのですがどうでしょう⁉
その翔くんに優しくされて智くんは…

続き楽しみにして下さってありがとうございます♪
下書きが終わり近々アップしますのでまたぜひ遊びに来てください♪
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前進 ()
2015-12-07 23:32:07
二人の距離がぐっと縮まりましたね。。
無我夢中で看病する翔くんが甲斐甲斐しくて♪
病気のときとか具合悪いときに優しくされたことってすごく胸に残りますよね。。
少しは心開くかな(*^^*)続き楽しみにしてます。
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しーな海里さんへ (きらり)
2015-12-05 19:08:44
しーな海里さん、コメントありがとうございます。

ちゃんと続き読んでますよって事を伝えてくれるために
コメントを下さったのかな。
ありがとうございます♪
読みましたよボタンとかあればいいんですけどね~。
でも読んで下さっているんだなって思って凄く嬉しかったです♪
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白紙さんへ (きらり)
2015-12-05 19:01:22
白紙さん、コメントありがとうございます♪

智くん、危うい感じですね。
しかも自分の美しさや妖しさにも自覚もないし誰か守ってあげないと危険な感じですよね。
かと言ってすぐに心を許す感じでもない。

そして翔くん自身も智くんに対する感情が保護者的気持ちなのか何なのかわかってないんですよね。
これから翔くんがどう関わっていくのか
どういう立場になっていくのか見ていただけたら嬉しいです♪
翔さんちゃんと見てあげてと思いながら見て下さってくれてありがとうございます♪
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Unknown (しーな海里)
2015-12-05 05:49:03
ここではあれこれ騒ぎ立てないで、続きを待ってますね。
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危なっかしくて (白紙)
2015-12-05 00:41:15
 なんか、この智君が危なっかしくて、翔さんちゃんと見てあげて~と、思いながら読んでいます。熱が上がって具合が悪いのに、頼れる人が居ないって、怖いですよね。お家に帰れないのにはどんな事情があるのでしょうか。翔さんのこと、信じていい人だと思ってくれると良いですね。保護者的いい人ではなくて。まだ時間がかかるかな…。
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