鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

No.614 (鶴岡市認知症対応力向上研修会)

2016-03-18 12:38:57 | 日記


3月18日、認知症対応力向上研修会が行われました。今回は、東京都健康長寿医療センターの荒木先生をお招きして、糖尿病と認知症とをテーマにした講演を拝聴しました。認知症は、栄養、運動、認知トレーニング、社会運動、血管性危険因子などに積極的に介入することで予防することが可能かも知れないとのことです。一方、以上のようなことができなくなるのが高齢化であり、「鶏が先か、卵が先か」という議論にも似ている気がしました。

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鶴岡市認知症対応力向上研修会
日時:平成28年3月18日 18:45~20:45
場所:医師会講堂
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1、開会

2、あいさつ(鶴岡市 長寿介護課 菅原課長)
  徘徊SOS:70名を登録、5件が発見につながる
  初期集中支援チーム


3、説明
  「鶴岡市認知症初期集中支援事業」
  「つるおかオレンジ手帳」

  ・認知症サポーター養成講座
  ・認知症を理解する教室
  ・「ほっと安心」見守りネットつるおか
  ・認知症カフェ:ほっこりかふぇ
  ・初期集中支援チーム
    とくに家族支援、BPSD予防に有用とのデータがある、
  ・オレンジ手帳

    
4、講演
  座長 荘内病院 神経内科 主任医長 丸谷 宏 氏

 「生活習慣病と認知症 ~糖尿病を中心に~」

  講師 東京都健康長寿医療センター
     内科統括部長 荒木 厚 氏
      S58 京都大学


糖尿病:65歳以上、 18.6%
糖尿病80歳以上、4人に一人が認知症
 
1、認知症の早期発見  

 糖尿病の認知症発症リスク:ADで、1.5倍、VaD(血管性)で、2.5倍、MCIで、1.2倍
  糖尿病治療はセルフケアが基本だが、認知症になると(注意力、情報処理能力、実行機能などの低下)セルフケアができない→悪循環
I(手段的)ADLの低下(とくに買い物と金銭管理)は、早期発見のてがかり
  (買い物と金銭管理がMCIを最も予測する)
 
  認知機能の検査
   時計描画テスト
   Mini-Cog
   MoCa-J:糖尿病における認知症に有用な検査:実行機能検査
   DASC-21:IADL,ADLを含む
   言語流暢性
 
  歩行速度低下は、認知機能低下の危険因子
   

2、認知症発症を加速する要因
  
  インスリン抵抗性(肥満、高脂肪食、運動不足、うつ、睡眠障害、喫煙、筋力低下・・)
  高血糖、低血糖、血糖変動
  低栄養
  動脈硬化

  認知症のリスク因子
   肥満
    (高齢者のBMI高値ではむしろリスクが減少する)
   睡眠異常、(睡眠時間が短くても長くても認知症になりやすい)
   うつ病
   運動不足 定期的な運動は認知症を予防する
   高血糖
   重症低血糖:認知症と重症低血糖は双方向の関係(重症低血糖があると認知症になりやすい、認知があると重症低血糖になりやすい)
   血糖の変動が大きいこと:脳の萎縮や認知機能の低下に関連する 
   収縮期血圧高値とTG高値:
   男性のビタミンB2、ビタミンA摂取低下
    (独居男性が食事をつくれないことが要因か?)
   
3、糖尿病治療薬と認知機能

  経口糖尿薬は認知機能低下を予防?
  GLP-1は、認知機能低下を防ぐ可能性?
  アルツハイマー病初期の患者にインスリン点鼻投与で認知機能が改善

4、認知症合併症の注意点

  1)BPSDに対する対処:環境の整備
  2)抗認知症薬
  3)食事療法
  4)運動療法:レジスタンス運動を含む
  5)重症低血糖対策と柔軟な血糖コントロール目標
  6)治療の単純化

5、薬物選択、低血糖対策、血糖コントロール目標  

  低血糖は症状は氷山の一角
   とくに認知症では、低血糖症状が多彩、→いつもと違った症状がある場合は、ぶどう糖をとる
  高齢者糖尿病では、重症低血糖のリスク評価が大切
   高齢者では、HbA1c7.0%以下で低血糖が増える
   eGFR45未満でSU剤による重症低血糖が増える

  重症低血糖を防ぐための対策
  1)低血糖予測
  2)SU剤の使用法
  3)インスリン量の増量:血糖変動を考慮して行う
  4)SU剤やインスリンの減量
  5)特効型インスリンと経口剤の併用
  6)少量のSU剤をグリニド薬に変更
  7)患者および介護職への教育
    介護職に、低血糖の症状と対応を教えておくことが重要

 高齢者では、HbA1cを7-7.5%に維持することが安全

 認知症の低血糖リスク、2.4倍
 認知機能障害の低血糖リスク:1.7倍

  
 認知症は予防できる可能性がある
  FINGER試験、
   60-77歳の1260人の住民を対象に、栄養、運動、認知トレーニング、社会運動、血管性危険因子の多くの領域の介入を2年間行った。
   介入群では、記憶、実行機能、情報処理速度などの認知機能の優位な改善がみられた。

 認知症予防のための1、10、100、1000、10000
  1、一人のかかりつけ医
  10、10人と話す
  100、1日100文字を書く、100gの緑黄色野菜
  1000、1000文字を読む
  10000、10000歩歩く

  認知症予防のための8か条
  1、高血糖、低血糖にならないようにする
  2、運動(30分以上を週3回以上)
  3、バランスのとれた食事(脂肪をとりすぎない、野菜、大豆を多くとる)
  4、適度な睡眠
  5、ストレスをためない
  6、人との交流を豊かに
  7、肥満の人は5%以上の減量を
  8、禁煙

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