チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

栽培作物(小麦、稲、トウモロコシ)

2012-07-17 15:59:28 | 哲学

16. 人間が創ったもの(文明、文化、科学、技術)
 16.1 栽培作物(小麦、稲、トウモロコシ)

 「文化」というと芸術、美術、文学や学術を思い浮かべるが、英語で「カルチャー」ドイツ語で「クルツール」の訳語であり「耕す」すなわち地を耕して作物を育てること、これが文化の原義である。

 人類はかって猿であった時代から毎日食べ続けてきて、経過した時間は数千年でなく、万年単位の長さである。その膨大な年月の間、人間の活動、労働の主力は、常に毎日の食べるものの獲得におかれてきたことは疑う余地のない事実である。

 人類は、戦争のためよりも、宗教儀礼のためよりも、芸術や学術のためよりも食べる物を生み出す農業のために、一番多くの汗を流してきた。小麦やイネは私たちの祖先が何千年もかかって、選択し改良してきた生きた文化遺産である。

 栽培作物でも特にイネ科のイネ、小麦、トウモロコシとマメ科の大豆は、重要な1年生植物(多年生植物に対して)である。1年生植物は、栽培することで大きな収穫を得ることができる。

 脱落性の野生小麦を非脱落性に、そして野生種は熟度が不揃いであり、細くてスマートな穂を、太くて厚ぼったい穂に改良し、牛に犂を引かせ漏斗の中に入れた種が自動的に落ちる仕組の図柄が彫られている。さらに畑地灌漑法によって、その収量を飛躍させた。

 そのパン小麦をイースト菌で発酵してパンを焼いた。これらの小麦(大麦)がインダス文明、エジプト文明、地中海文明を支えてきた。

 イネは、インド、中国、東南アジアに於いて水田、陸稲の2方向で、より北へ、より高地へと広がり、さらに大豆と組み合わさり、麹によって味噌、醤油を発生させた。揚子江文明、日本文化はイネに支えられている。

 米と小麦が入り乱れて主食とされる地域を見ると中国でもインドでも、民衆は常に米を食する方を望んでおり、米からコムギに転換した民族はないが、コムギ食民族はどんどん米食を取り入れている。(栽培植物と農耕の起源 中尾佐助)

 しかしながら今日、穀物食から肉を多く食べるようになっている。このアメリカに於ける肉食の大衆化を支えているのは、家畜の改良とトウモロコシの一代雑種による高収量化である。人類はより豊かな、より栄養価の高い食生活を求めて、コムギ、コメ、トウモロコシ、大豆、牛、ニワトリの増産に向かっている。

 栽培作物や家畜は、人類の叡智の集積として、食料の高生産性によってエントロピーに逆走している。一代雑種によるところが大きいが、これを実現するために、雄性不稔の形質(ミトコンドリア遺伝子の異常)を遺伝子組み換えによって完成させているが、自然界に本来存在してないものなので、ミツバチの異変や、人の精子の減少に影響してなければ良いのだが。(タネが危ない 野口勲)(第23回)



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