「音楽&オーディオ」の小部屋

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魔笛視聴コーナー~CDの部~まとめ1

2007年04月10日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

1937年のビーチャム盤から2005年のアバド盤まで、21セットのCD盤(教会、ホール、スタジオ録音等)の試聴が終了したが、今のところまだ下記の7セットのCD盤が未試聴となっている。

クイケン2004、クェンツ1994年、ハラッシュ1993年、ショルティ1990年、ジョルダン1989年、コープマン1982年、レヴァイン1980年

どうやら、ネットなどで気長に探すほかは手立てがないようだが、今更ながら魔笛の指揮者がこれだけ多いことに驚かされる。おそらくあらゆる作品の中でもトップクラスではないだろうか。

さて、不完全ながら延べ21人の指揮者を通じておよそ、70年間の魔笛の演奏の移り変わりを見てきたことになるが、当然、楽譜は不変なので基本的な部分はそのままなのだが連続試聴を通じて感じたことを記してみよう。

♯13のデービス盤(1984年)を境にして、以降の魔笛は演奏がスリムになってきている印象を受けた。編成の大きなオーケストラから古楽器を使用したこじんまりとした魔笛へと流れが変わっている。

これは、魔笛創作当時(1791年)のジングシュピール(台詞に音楽を組み込んだ大衆向けの歌芝居)への回帰なのだが、何だか大河小説から私小説へと移っていく印象を受けた。

したがって、指揮者の方もやや近視眼的な傾向になってきており、その思い入れと鑑賞者の感性が合致しない場合は好き嫌いの落差が大きくなる。

バス、バリトン、テノールの男性陣で歌唱力が落ちてきている印象を受けた。過去の大歌手達と比べて人材が枯渇気味の感がする。一方、ソプラノ、ハイソプラノは百花繚乱気味でこれもやや小粒の感はするが女性陣の方がむしろ元気がいい。

極論だが、魔笛は歌手のレベル次第である程度完成度が決まる。指揮者の役割も大きいが歌手の出来具合に比べればそれほどでもない。

しかも、このオペラの性格から推して、女性歌手よりも男性歌手の方が成否の鍵を握っている。その意味で近年において質的には決して演奏が向上している傾向にはない。

録音技術の変遷については1980年頃を境にアナログ録音の時代(♯1~♯10)前期とデジタル録音の時代(♯11~♯21)後期との二つに大別される。

前期のCD盤(レコードの音源からの焼き直し)は玉石混交だが、後期のそれは確かに粒がそろって一定のレベルを確保している。しかし、デジタル録音が万能ではないことも確認できた。アナログ録音もいいものはいい。むしろベーム盤(1955年)などは、近年の録音と比べても聴きやすさにおいてそれほど遜色は無い。

主役級の登場人物が多いことから、とらえどころが無いと評されるこのオペラだが、完成度を測るものさしの一つを自分なりに見付けた気でいる。

そのものさしとは、タミーノ役(テノール)とパミーナ役(ソプラノ)の2人で、この二人が本来の主役としてしっかりした歌唱力を発揮し、釣り合いがとれ、相性がよければこのオペラはまず、きちんと成立する。逆に言えば、この二人のうちどちらかでもミスキャストがあればかなりダメージは大きい。ベームの1964年盤はその最たる例だ。

以上の四点について主として感じるところがあった。次のまとめ2(最終)では総合A+、個別の歌手達のA+を拾い出してみよう。


                       
            21セットの魔笛





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