25日(木)の朝のこと。家具業者に注文しているスピーカーボックスの進行具合が気になったので電話してみた。
「26日が納期ですが、大丈夫でしょうね」
「それが、ちょっと・・・。27日になりそうなんですが。」
「エ~ッ、ちゃんと26日と約束したじゃない・・・。しょうがないなあ。それで27日の何時ごろになりそう?」
「ニスを塗ってすぐに持って行きますが、しばらく匂いがきついけどいいですか。」
「匂いが部屋にたちこもるのは困るよねえ。乾燥しないとSPユニットも取り付けられないし。そしたら、28日〔日〕の9時に間違いなく持ってきて。」
とうとう2日間も譲歩してしまった。まあ、楽しみが延びただけだがそれにしても気合をそがれてガッカリした感は否めない。
16日の打ち合わせのときにちゃんと工程表を作成させて「詰めて」おくべきだったと思ったがもう”あとの祭り”。現役時代と同じでいつも「緻密」さに欠け、「甘いなあ~」と慨嘆。
交渉相手はY田さんといって50歳前後の方。学生時代はたいへんなオーディオ・マニアで安いSPユニットを購入してボックスの自作に励んでいたそうで、共感を覚えて思わず話が弾んでしまい、人情にほだされてつい「詰め」がおろそかになってしまった。
余談になるが、このY田さん、学校を卒業して社会に出るとあまりの忙しさにオーディオどころではなくなり、以後ずっと遠ざかっているという。
これはほんの一例だが「オーディオは好きだけど忙しくて楽しむ暇がない」という方が世の中ではほとんどの多数派かもしれないと思い、「安月給だったがヒマのほうは結構あった」自分はそういう面では恵まれていたのかもしれないなんて感慨に耽った。
ともあれ、29日〔月)に福岡からお客さんがお見えになる予定なので「まあ、それに間に合えばいいか」と思い直したところ。
話が前後するが24日(水)午前中に、湯布院のA永さんが再度、低域ユニットの性能確認のためお見えになった。お話を伺ってみると、このユニットが大いに気に入れられて結局、12本購入されたという。
「エッ、12本もですか」とびっくり。使用する内訳は「アキシオム80」の低音用に我が家と同様に8本〔片チャンネル4本)、そして「ハートレー」の中低域用に4本(片チャンネル2本)ご使用の予定だそう。
A永さんも自分と同様に「アキシオム80」(SPユニット:イギリス)にすっかり魅せられた方。あの、エッジレス特有の音声信号に対する追従性の高い繊細な中高音はまさに独壇場。
しかし20年間使用されて悪戦苦闘されたが、組み合わせるウーファーに恵まれず、諦めて現在は部屋の片隅に鎮座中。
しかし、我が家の組み合わせを聴かれて「アキシオム80に組み合わせるウーファーはこれしかない」と決断された由。オーディオ・マニアが通常使う口径38cmのウーファーでは口径20cmの「アキシオム80」のスピードについていけず、満足出来る音にならないとのことだった。
たしかに自分も定評のあるJBL130A〔口径38cm)をしばらく組み合わせてみたが、うまくいかなかったので同感。
この日、試聴盤としてお持ちになったのはヴィヴァルディ作曲の「バスーン協奏曲」。このバスーンという楽器は丁度、音域が50ヘルツ前後から600ヘルツぐらいまでで低域用のテスト盤としては最適だとおっしゃる。
「非常に澄み切ったいい低音ですねえ、しかも立ち上がりと収束が早くて余分な音がまとわりつかない、エッジレス特有の素晴らしい音、これが4本ともなるとワクワクしますね」と改めてゾッコンで「12本確保できてよかった」。
などと、オーディオ談義に花を咲かしていたところ玄関のチャイムがピンポ~ン。「どなたですか?」「日通航空です。海外からの輸入品をお届けにあがりました」。
お~、追加するユニットが4本ご到着のようだ。落札してお金を振り込んでから丁度1週間目。はるばるハリウッドからの輸送なので随分と厳重に梱包してあり独りで抱えるのは困難なほど。
加勢してもらって、部屋の中に運び入れ梱包を解いた。
「カミさんが留守のときに届いて運が良かったですよ。オーディオ製品としてはたいへん安い買い物ですが、これまでのこともあってなかなか信用してくれませんからね」。
すると、A永さん「目立つので空になったダンボールをすべて、会社の方で処分してあげましょう」とたいへんありがたい申し出。お互いに苦労しているのでその辺は「阿吽(あうん)の呼吸」でたいへん機微が分かる方。これで痕跡が跡形もなく消え去るので大助かり~。
余談になるが、国内では随一の高級品メーカーとして知られるアキュフェーズのフラッグシップモデルの「プリアンプ」は改良の都度、外見(デザイン)を変えないというが、これは部屋の中で”そっと”旧型と入れ替えても奥さんが気がつかないようにという配慮がなされているという実(まこと)しやかな話を聞いたことがある。
(本件を記載するに当たって、ネットで確認してみたところ現在は「C-2810」の型番になっていたが、このデザインは第一号機「C-280」〔1982年発売)とそっくりで何と30年近く変わっていないのに改めて驚いた!)
どうやらどこのご家庭でも同じみたいだが、さて、女性のオーディオ・マニアはまず聞くことがないがどうしてだろう。
夫婦そろってオーディオ・マニアだと人生が2倍楽しくなりそう!