前々回からの続きです。
自分がもし”ひとかど”のオーディオマニアだと思っているのなら、「いい音」というのは個人の「美的感受性」のレベルによって左右されると分かっているはずなのに、オーディオ機器さえ上等なら簡単に手に入るという錯覚に陥りがちなのもこれまた悲しい現実である。
今回のタンノイとJBLのSPユニットの交換という大胆な試みも、「美的感受性」の重要さが自分の脳裡にきちんと刻み込まれていれば、とても思いもよらない発想だったのかもしれない。
けっして言い訳するわけではないのだが今回の当該ブログの趣旨は、「いくら神格化されたスピーカーでも使っているうちに、もし”音”に疑問を感じたり、飽いてきたときには、こういう思い切った使い方もありますよ~」というほんの軽い気持ちだったのだが、まさに「口は禍のもと」ならぬ「筆は禍のもと」、こうした奥深い考え方もあるのかと思うと(自分の軽率なブログに)少なからず恥じ入ったことだった。
ただ、地元仲間の湯布院のAさんからは、「ブログは個人の日記みたいなものですからねえ。あたりさわりのないことを書いても、ちっとも面白くありませんよ。たとえ常識はずれの低次元のことでも自分の信念のもとで思い切ったことを書かないとあなたの個性がうまく出ませんからね~」というご意見もあって、たしかにその辺の兼ね合いもあるところで、両方のバランスをうまくとるのが、まあ「センス」というものだろう。
ところで、ここからようやく本題に入らせてもらって今回のテーマは「メーカーの技術屋さんは信頼できるの?」である。
実は今回の件で、一番印象に残ったのはメールの中でMさんがいみじくも漏らされたように「一流メーカーの技術屋さんに一目も二目も措いている」という言葉である。
Mさんはオーディオ歴も長く真空管アンプを実際に自作される素晴らしい技術者である。
現在は会社をご退職されているが、これまでに故障した真空管アンプを2台ほど修繕していただいたが、きちんとした技術的な裏付けのもとに修繕や改善個所をきちんと写真にとって画像で送っていただき素人の自分に分かりやすく説明しながら進めるその親切な手法に感心しつつ、完了後の素晴らしい音色とその”たしかな腕”に驚嘆させられたものだった。これはまったくお世辞抜きの本心からの賛辞である。
おまけにクラシックが”大好き”ときていて以前、グールドのCD盤「イギリス組曲」(バッハ)をお借りしたこともあって、「技術力+音楽への深い造詣」のコラボレーションのほうも完璧でまさに技術屋さんとして「鬼に金棒」の方である。
そういう方だからこそ、「一流メーカーの技術屋さんに一目も二目も措いている」という言葉に、ひときわ深い印象を受けたというわけである。
実を言うと、自分はこれまでオーディオ評論家に対するのと同様にメーカーの技術屋さんに対してもたいへん不遜ながら、懐疑的な目を向けてきた一人である。
もちろん、お医者さんなどの富裕層がよく使っているアキュフェーズなどの精緻な高級製品などは、一般的な技術屋さんも含めて”介入する”余地はほとんどないといっていいが、真空管アンプなどの場合は部品数も少なく回路も比較的単純なので、いったん出来上がった製品でも可能性の宝庫みたいなところがあって実に面白い存在だといえる。
現在、自分も二つのシステムで3台の真空管アンプ(いずれも三極管のシングルで出力管はWE300B、PX25、2A3)をフル回転させているが、初段管や、出力管、コンデンサーの銘柄を変えるだけで音がコロコロ変わるのだから楽しみも多いが、一方ではその良し悪しの見極めもたいへんである。
以下、「第3部」へ続く。