以前のブログにも登載したように、今年の1月に「労作性狭心症」と診断され、即座に「心臓カテーテル手術」を受けて「ステント」を2本、心臓血管の狭窄した部分に挿入した。
退院する際には、「1年後に再度カテーテル検査をしてステント部分の血管の詰まり具合を是非見せてください」との病院からのお達しだった。
その来年の1月が間近に迫る中、現在、心臓の自覚症状に違和感はまったくないものの、このまま何となく気になる状態で「正月」を迎えるのも「癪」なので早めに病院に行って先制攻撃を仕掛けることにした。
前回はなにせ始めての「心臓手術」におっかなびっくりで、わざわざ隣のO市の大病院を選んで手術を受けたが、「心臓カテーテル」は技術的に確立され安全な手術だと分かったので、今度は気楽な気持ちで車で10分ほどの交通の便がいい地元の公的病院で診てもらうことにした。
12月14日(水)~16日(金)にかけて二泊三日の小旅行気分で入院したが、15日の手術に備えて14日の夕方に主治医(以下、「O医師」)と面談。
まず自分から、こう切り出した。
「前回のO病院でのカテーテルの手術中のことですが、それこそ息をするのも苦しいほどで脂汗をビッショリ流しました。動脈硬化でニキビ状になった血管にステントを埋め込んだとき、プラーク(垢)が飛び散り一時的に毛細血管の一部が詰まったみたいです。
プラークが飛び散りそうなときはステントの両端にパラシュートをつけて回収するようになっていると聞いていたのですが、どうもお医者さんがそういう処置をやってくれなかったみたいで、もしかして後遺症が残っていないかと心配です。術後の血液検査でも心臓細胞の一部破壊が数値として明らかに出ていました。」とやんわり申し上げた。
すると「心臓血管に異物を入れるときは生体が拒絶反応を起こしますので、ステントにパラシュートを付けるかどうかは医師の判断に任されていますが、やはり異物には違いないのでなるべく容れない方がいいと思いますよ・・・。とにかく必要な処置を施したら素早く撤退するのが原則です。前回のときは手術中に一時的な軽い心筋梗塞を起こされたのでしょうね~」と、明らかに思い当たる節のありそうな顔をしながら当たり障りのない返事をするO医師。
年齢的にはまさに脂の乗り切った40歳代くらいの温厚そうな方だったのでまずはひと安心。何せ自分の命を100%委ねる相手だから人間観察にはひときわ慎重になる。
ここまで言っておけば、念には念を入れて慎重に手術をやってくれるに違いない。
翌15日は、予定きっかりの13時から手術開始。
文字通り、まな板の上の鯉で手術台の上で覚悟を決めて深呼吸を繰り返す中で前回どおり右手首からカテーテルを挿入されたが今回は明らかにカテーテルが心臓に届くのが自覚症状としてわかった。
事前に同意書をとられたとおり、術中に人工的に心臓に痙攣をおこさせる薬を注入されて(心臓の)動きの反応を観察されたが、まったく異常がなかった。前回のときは1時間ほどかかったが、今回は滞りなく30分ほどであっさり終了。
その日の夕方、O医師から画像写真を見ながらていねいに説明があった。
「まったく異常はありませんでした。今のステントはレアメタルが使ってあってものすごく性能が良くなっています。以前は10人に2~3人の割合で再狭窄が見つかっていましたが、現在では一桁違っていて、100人に2~3人の割合になりました。
ステントを埋め込んだところが大きな血管となって中心的な役割を果たしています。ほかに一部の血管が細くなっているところがありますが、それをカバーするかのように他から血管が迂回してきています。この心臓ならマラソンだって大丈夫ですよ。そのために、ステントを容れたのですからね。心臓を大事にしすぎるとかえって筋肉がサボってしまいますから適度にハード・トレーニングをしてください。」とうれしいお達し。
「いやあ、先生どうもありがとうございました」と、うれしさと感謝の気持ちいっぱいで、前もってカミさんから指図があったとおり「心付け」を少々包んだ。(こんなこと、書いていいのかな?)
その場で気持ちよく受け取ってくれたので、安心していたところ、退院後の翌々日、自宅に「現金書留封筒」が届いた。
「折角のご配慮の御品ではございますが、私ども〇〇病院に勤務する職員挙げて、綱紀の厳正な保持に取り組んでおり、皆様からのご贈答品につきましては固くご辞退申し上げているところでございます。お気持ちのみ、頂戴させていただきます。」という文面が添えてあって「心付け」がそっくり同封してあった。
医師への任意の謝礼で受け取ってもらえなかったのは今回が始めてのケースで、まさか送り返して来るとは夢にも思わなかったが、かえって現金書留代金の余計な出費をさせてしまい大いに恐縮したことだった。
さ~て、この宙に浮いた「お金」をどうすりゃいいのか「思案橋ブルース」だが、カミさんに正直に言おうか、それとも・・・。
なお、日ごろ運動ジムに通っているうちに顔見知りになった同年輩ぐらいのご婦人から、カテーテル手術の経過を詳しく訊かれたので、状況を正確に教えてあげると、その方のご主人がやはり狭心症気味でカテーテル手術を恐ろしがってなかなか病院に行きたがらなかったそうだが、自分の話を伝え聞いてようやく重い腰を上げて病院へ行こうと決断された由。
もちろん、ステントの挿入後は毎日、血液をサラサラにする薬が欠かせないのがデメリットの一つだが、94歳と11か月で今年の9月に亡くなった母は25年間ずっとこの薬を飲み続けたが副作用はまったく心配しなくてよかった。
このご婦人によると、自分が教えてあげた「この心臓ならマラソンだって大丈夫ですよ!」とのお医者さんの言葉が、どうやら強力な”プラス・イメージ”となって病院行きを渋るご本人の背中を力強く後押しした模様だ。
どうやら「ステント」を容れてしまうと行動に制約ができて半病人みたいになるという先入観があったらしい。
もしかして、人助けに貢献できたかな?