どうやら、いいことにしても悪いことにしても連続して発生するのがこの世の倣いのようだ。
10月に入ってからおよそ1か月近く、オーディオ仲間との交流が途絶えていたのに、31日(土)の福岡での「試聴会」を皮切りに、このところお客さんラッシュが続いている。
1日(日)はクルマで10分ほどの近所にお住いのYさんがお見えになり、4日(水)は福岡からGさんが、そして昨日(5日)は同じく福岡からKさんと、3人のお客さんが次々にご来訪。
オーディオマニアにもいろんなタイプがあって、絶対自分の感覚が正しいという「自信派」からなるべく人の意見に素直に耳を傾ける「謙虚派」までさまざまである。それぞれにメリットがあり、どちらがいいとも悪いともいえないが、自分は後者に属しており、お客さんが見えるたびに勉強させてもらおうという心積もりでいるのでお客さん大歓迎(笑)。
真空管アンプが8台、スピーカーが3系統あるので、いろいろ相性を考えて組み替えながらお客さんの(試聴結果の)ご意見をお伺いすると、「なるほど、ごもっとも!」と思うことが多く、自薦、他薦のもとに自ずからスピーカーと真空管アンプの組み合わせが絞られてきた。
たとえば、
1 スピーカー「フィリップス口径30センチ・ダブルコーン」(ウェストミンスターの箱入り)に相性のいいアンプは2台あって、一つは「WE300Bシングルアンプ」(モノ×2台)と、残る一つは「PP5/400シングルアンプ」
スピーカーの箱が大きいので、容積内の空気(背圧)を押し出すのにはそこそこのパワーが必要のようだ。
2 スピーカー「AXIOM80」に組み合わせるアンプは小出力の「71Aプッシュプル・アンプ」、「71Aシングル・アンプ」が良好。
と、いった具合。いずれにしろ、最近DAコンバーターの「エルガー プラス」(dCS)を導入してから、我が家の音は明らかに一皮むけたようである(笑)。
前置きはこのくらいにして、後日のため忘れないように各人との試聴結果の特徴的な事柄を記しておこう。
☆ 1日(日)のYさん
「いやあ、AXIOM80からこんな低音を聴かせてもらったのは初めてです。」と、絶賛してもらったのが「71Aプッシュプルアンプ」。いつぞやのブログに登載したとおり、オークションで手に入れたアンプだが、想像以上の出来栄えに今のところ愛情度100%(笑)。
電圧増幅管には手間もコストも安上がりで済む双極の真空管を使うのが一般的だが、このアンプは一極の「27」真空管(1920年代)をドライバー管に4本使ってあるところがミソだと秘かに睨んでいる。オークションで落札した動機もこれが主で、もう一つ、出力トランスに「ピアレス」が使ってあるということだけである。
それと、YさんはWE300Bのオリジナルと中国製の300Bを比較試聴され、その違いにも驚かれていた。「中国製は楽器だけを再生している感じですが、オリジナルのWEともなると全体の雰囲気まで克明に再現しますね。これほど違うのなら、どんなに高くてもWEが欲しくなる気持ちがよく分かります。」
「そうでしょう!オリジナルに優る300Bはこの世には存在しないんですから~。」(笑)
☆ 4日(水)のGさん
Gさんは真空管アンプ製作のベテランで我が家のアンプのうち半分に当たる4台の製作・改造に当たってもらった方。所要があって、湯布院にお見えになったついでに我が家(別府)まで足を延ばしてもらった。
例によって寡黙、そして辛口で滅多にOKサインを出さないGさんだが、Yさんと同様に「AXIOM80+71Aプッシュプルアンプ」には、ご満足されたご様子でまずはひと安心。
たいへん耳のいい方で、とりわけ位相の管理にはとてもシビヤ。我が家の場合もSPコードのプラス、マイナスをいろいろ繋ぎかえて試していただいた。それこそ、我が家では半年ほど前にオールJBLのユニットで3ウェイを組んでいたのだが、位相の調整がうまくいかなくてとうとうフルレンジにした経緯がある。
位相がおかしい場合、聴いていて音像が右に左にフラフラ動く。あまりいい耳の持ち主ではない自分にはやはり調整が不要なフルレンジが向いている。
それと、Gさんは我がブログを常に読んでおられるようだが「釣の獲物が毎回すごいですね。釣果の画像を毎回同じものを使い回しているのかと、詳細に見比べたらやっぱり違うみたいですね。」
考えることは誰しも同じようで~。何といってもこのブログの取り柄といえば「リアリティとオネスティ」だけなんだから、画像の使い回しなんかすると一気に信用度がガタ落ちしそう(笑)。
☆ 5日(木)のKさん
昨日の11時から16時過ぎまで5時間にわたってみっちり試聴されたKさん。悪いときは悪いとハッキリ言われるので我が家の音の羅針盤としてたいへん貴重な存在だが、この日は2系統のシステムともべた褒めだった。
はじめに、名盤の誉れ高いシェリー・マンの「マイ・フェア・レディ」(ジャズ:1956年)を聴いていただいたところ「これまでいろんなところで聴いてきたシェリー・マンの中ではこの音がベストです。この箱にフィリップスを容れて鳴らしているのは世界でもここだけでしょうが、ピタリとハマってます。私には口径30センチのユニットがギリギリのサイズです。これ以上になるとどうしても低音のスピードが遅れがちになりますから、タンノイのユニットを入れ替えて大正解ですよ。」
ここでシステムを紹介しておくと、CDトランスポート「ヴェルディ・ラ・スカラ」(dCS) → DAコンバーター「エルガー プラス」(dCS) → プリアンプ「真空管式」 → パワーアンプ「WE300Bシングル」(モノ×2) → 「フィリップス口径30センチのダブルコーン」(ウェストミンスターの箱入り)
この際とばかり、シェリー・マンについて面白い実験を試みた。
1 オリジナルのCD盤
2 パソコン用の外付けCDドライブ「プレクスター」を使って「CD-R」盤に焼き直し
3 CD盤をパソコン「メディア・プレイヤー」にいったん取り込んで、これを「USBメモリ」に収録
にわか仕立てだが、この3種類のソースを聴き比べてみようという算段である。コスト的に一番安上がりで済む「USBメモリ」が健闘してくれれば言うことなし(笑)。ちなみに、この3つのソースともすべて「エルガー プラス」を経由させている。
いやあ、面白かった!Kさんの寸評によると「1と2はほとんど聴き分けがききません。3は1にくらべて音像のエッジがやや丸くなった感じで長時間聴くには最適です。私なら常日頃は3を聴きます。たとえて言うと、1はマイクロフォンから収録した直接音で、3は客席で聴いてる音ですね。」
「USBメモリ、侮るべからず」で大健闘である。ま、CDトランスポートが故障しても、これで何とか“当座しのぎ”はできそうかな(笑)。
次に、チョン・キョンファのヴァイオリンでバッハの「パルティータ」を試聴した。デッカの優秀録音である。
「へ~、チョン・キョンファがお好きなんですか?」と、微妙な口調で申し上げた。
「藝術に国境はありませんよ。バッハのパルティータはシゲティとシェリングが東西の両横綱ですが、キョンファはなんといってもシゲティの直弟子ですからね。」
「坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎し」をチョッピリ反省(笑)。
さて、ヴァイオリンの響きとなると「AXIOM80」の独壇場である。あれほどうまく鳴っていたフィリップスが急に色褪せて聴こえるから不思議。
「この71Aプッシュプル・アンプはとてもお買い得でしたね!5倍以上の値段がついてもおかしくないほどです。71A真空管に限ってはプッシュプルでもシングルに比べて音色に遜色はないとずっと思ってきましたが、ここで改めて確認できました。このアンプ群の中では、AXIOM80にベストマッチです。」
今回も実り多き試聴会だった。どうやら、これでようやく我がシステムも落ち着いたかなあ~。
しかし、とても一筋縄ではいかないのがオーディオだ。なにしろ日によって(オーディオ機器の)ご機嫌がクルクル変わるんだから、もうたまらん!(笑)