SPユニット「AXIOM80」を愛好する3人組(Kさん、Sさん、自分)が集まって、持ち回りで1か月に1回のペースで開催している試聴会も早いもので6回目を迎えた。同じSPを使っているとはいえ、三者三様の個性豊かな音なので開催の都度新しい発見があっていつも胸がワクワクする。
3か月ごとに順番が回ってくるが、今回は10月31日(土)にSさん宅(福岡)での開催となった。
ご存知の方も多いと思うが「男子三日会わざれば刮目してみよ」(出典:「三国誌」)という言葉がある。
「男の子は三日も会わないでいると驚くほど成長しているものだということで、しばらく会わなかった場合は注意深く見て接するべきだ」という意味。
それからすると三か月にも及ぶ期間なので、Sさんの熱心さと相俟ってシステムの方も前回(7月)よりも相当前進しているだろうと踏んでいたのだが、想像以上に激変していた!
何とレコード・プレイヤーの「930ST」(EMT)が鎮座していたのである。性能も飛びっきりだが、お値段の方も飛びっきりで有名(笑)。
もちろんCDプレイヤーの「LHH2000」(フィリップス)と併行しての活用となるが、「なぜ、今さらレコード?」と思う向きもあるだろうが実際に音を聴かせていただくと納得の一言だった。
昔、レコードに親しんで育った人間には、まるで故郷に戻ったような懐かしくて肌触りのいい音。それかといってけっして懐古趣味に終わることなく、歌手や楽器の実在感がリアルに伝わってくるのには驚いた。それに細かい音を実によく拾う。
これまで「930ST」とカートリッジの「TSD15」に持っていたイメージとしては、生産国のドイツのイメージと重なり合って「どちらかといえば杓子定規で周波数レンジがやや狭めだが骨太で重量感のある音」だったが、よく調整された930STともなるとまったく様相が違っていた。
メインアンプは従来どおり真空管「PP5/400」シングル・アンプ、スピーカーの方は、以前と同じでタンノイの「シルヴァー」が入ったコーナーヨーク、そして言わずと知れた「AXIOM80」(最初期版)。
ここで、ふと思ったのだがCDが登場してからおよそ35年あまり、どうやら音の入り口段階はその間に三極分化の様相を呈しつつあるように思っている。
一つはレコード回帰派、もう一つはCD発展型のSACD派、そして残る一つはPCオーディオ派である。それぞれにいいところがあって、たとえばレコードは歌手や楽器の細部のリアル感に富み、SACDは全体の音響空間を俯瞰しつつ音像のフォーカスのシャープさに定評があり、そしてPCオーディオは回転系を必要としない開放感とストレートさがきっとあるに違いない。
その点、CDは中途半端でちょっと持ち味に乏しい~。ただし、これはあくまでも個人的な感想である。
そういえば、現在交流のあるオーディオ仲間たちはすべて「レコード+CD」派になっている。自分はといえば、もうレコードはすべて処分してしまったので、今や「SACD+CD+USBメモリ」の混在派となっている(笑)。
3人組の仲間の一人、Kさんだってこのところレコード派に転向されており4台ものプレイヤーが活躍中でアイドラー・ドライブ、オイルダンプ・アームに拘っておられる。何しろ1500枚にも及ぶクラシックレコードと500枚ほどのジャズの輸入盤がズラリと並んでいるから壮観。
「よくもまあレコードを売り払わなくて良かったですねえ」と、言うと「ええ、どうもCDの音が食い足りなくて、いつか出番がやってくるかもしれないとレコードを処分する気にはなりませんでした。」
今回の試聴会ではKさんが選りすぐりのレコードを持参されていた。超重量盤の「アルペジオ・ソナタ」(シューベルト)や「ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲22番」(ボベスコ)、そしてケルテス指揮の「新世界より」など。このケルテス盤のSACD仕様は現在オークションで「10万円」ほどの高値を呼んでいるほどの名盤。録音はデッカである。
アナログ時代のデッカの録音は現代になって「魔笛」(ショルティ指揮)など次々にSACD化されて蘇っているが、現在のデジタル録音とまったく遜色がないのだから、いかに当時の録音が優秀だったかが分かる。
一同、ケルテス盤を聴きながら「やっぱりデッカの録音は別格ですねえ。とにかくイギリス人は音楽を知ってますよ。グラモフォン(ドイツ)、フィリップス(オランダ)、エラート(フランス)など、一流レーベルにはそれぞれ録音にお国柄が出てます。ヨーロッパは経済的に衰えたりとはいえ、いまだに由緒ある伝統はとても侮れないですね。」
ちょっと話が逸れるが、その由緒ある大英帝国が何ともみっともないことをしてくれた。
こともあろうに、言論の自由がない、人権無視の中国と原発などの大規模投資をしてもらうために手を組んだのである。かって外務官僚だった宮家氏がテレビに出演してイギリスのことを「貧すれば鈍する」と洩らされていたが、まったくその通り(苦笑)。
中国も中国だ。かっての「阿片戦争」(1840年)で当時の英国がどういうことをやったのか忘れてしまったらしい。日頃から歴史認識を声高に叫んでいる国が手の平を返したような対応をするのだから驚く。
以上、「物言わぬは腹ふくるるわざなり」(徒然草)。ああ、胸がスッとした(笑)。
さて、Sさん宅での試聴は結局3時間に及びクラシックを十分堪能させてもらった。帰宅後に次のメールを送った。
「18時丁度に帰宅しました。本日はいい音を聴かせていただきありがとうございました。やはりアナログはいいですね。SACDでは出せない音ですよ!感心しました。これからいろんなレコードを聴くのが楽しみですね。我が家ももう一度ひと踏ん張りせねばとファイトがわきました(笑)。それでは」
すると次のような返信メールが届いた。
「こちらこそ、そう言って頂けると、〇〇邸のSACDの音に触発され、あの音を越えたいとばかりにアナログを再開した甲斐があります。EMTも世間一般に言われる評価と実際に自分でシステムに組み込んでみるのとでは随分と違うものでした。CDもADもそれぞれに良さがありますから、どちらも追求してゆかなければなりませんね。」
次回の11月はKさん宅(福岡)で開催、そして我が家での開催は12月となる。
それまでに、どうにか工夫してもっといい音を出さねば・・・・(笑)。