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衆院内のねじれ、衆参のねじれで政治は長期停滞

2024年10月30日 | 政治

 

 

安倍政治がもたらした敗北

2024年10月30日

 

  衆院選で自民党が歴史的な大敗を喫し、立憲民主党、国民民主党が躍進し、自公政権が過半数割れをしました。メディアには「安倍政治の負の遺産」(政治学者・牧原出氏の指摘)が自民の敗北を招いたという視点が不足しています。政局舞台裏の情報ばかりが溢れ、長期的な分析が足りないように思います。

 

 メディアは石破氏の失策の数々を責めることに懸命で、「安倍政治が民主党から政権を奪還して、アベノミクスのゼロ金利・財政拡張で最長の政権を維持した。その間、旧統一教会との癒着、安倍派を中心とする政治資金・裏金事件、円安と物価高などの遺産で、政権を失う瀬戸際に追い込まれた。つまり安倍政治は勝って負け、結局、ご破算になった」という指摘があまり目につきません。安倍政治の検証が改めて必要です。

 

 異次元金融緩和と巨額の国債発行が生んだ遺産で、金融・金利政策の自由度がなくなり、円安にも対応できず、国民は物価高に苦しんでいます。表面的には裏金問題が自民党の最大の敗因のように見えても、安倍政治の積り積もった遺産による敗因も限りなく大きい。

 

 世論調査(読売、30日)の結果をみると、「自公過半数割れはよかったが58%に達し、よくなかったが25%」でした。今後の政権の枠組みについて「自民党中心の政権の継続が43%、野党中心の政権に交代が40%」です。過半数割れは大差で歓迎する一方、政権交代には賛否が半々です。「野党はよくやった。でも政権は任せられない」。民意のねじれが感じられます。

 

 民主党時代の鳩山、菅政権当時の拙劣な政権運営の記憶が今も生きています。「自公連立に日本維新の会が加わることには反対48%、賛成29%」、「自公連立に国民民主党が加わることには反対51%、賛成25%」と同じような比率です。今の与党を過半数に追い込むことが野党の目標であったのに、政権の枠組みを広げて、与党が過半数を回復してしまうことへの懸念を民意は持っているのでしょう。

 

 国民民主党も自公連立には加わらないといっています。その結果が「過半数割れのままの自公政権の継続」と「過半数を超えたはずなのに政権をとれない野党(国民民主党の政策連合など)」であれば、これは衆院におけるねじれです。予算案、安全保障、教育、持続可能な財政運営などの対立で、案件ごとの部分連合で処理していこうとすると、少数政党の要求を丸呑みすることになりかねず、財政はどんどん膨張し、財政危機は深まる。

 

 石破首相の選挙目当てにしたつもりの「13兆円を超える補正予算」に、「手取り増」を掲げた国民民主党が要求する「電気・ガス・ガソリン代の補助、消費税5%への引き下げ、給付付き税額控除」などを加えたら、財政は破綻まっしぐらでしょう。

 

 来月前半の首班指名選挙で、国民民主党は自民党に乗るのか、立憲民主党に乗るのかを明らかにしていない。「せっかくの与党を過半数割れに追い込んだのに、自公に乗れば裏切りだ」となり、来夏の参院選では敗北が待っていましょう。玉木代表は「首相指名選挙では、決選投票でも玉木雄一郎と書く」という。決選投票は石破対野田でしょうから、「玉木票」は法律上、無効となり、石破氏が首相となる。それも民意に対する裏切りとなります。そこで「政策連合」を持ち出すのです。

 

 衆参の間には、すでにねじれが生じています。参院は自民(114)、公明(24)で、定数248の過半数を占めています。野田首相が誕生しても、自公が多数派の参院で否決される法案(予算案は衆院優位)が出てくるでしょう。来夏の参院選で野党がまた大勝できるでしょうか。

 

 新聞各紙の社説をみると、朝日は「石破首相が続投を表明した。国民の信を失ったままでは、政権の継続は至難の道だ」と、退陣要求を示唆しています。読売は「大敗した石破首相がとるべき道は明らかだ。速やかに進退を決すべきだ。政権に居座ることは許されない」と、もっと強硬な要求です。

 

 朝日は野田首相を待ち望んでいる。読売は逆に、石破首相に代わる誰か(自公政権の継続)を望んでいるようです。「速やかに」というのですから、首相指名前に代わりを選べというのでしょうか。そんなことをしても、内閣不信任案を出されれば、それで新首相は終わりです。高市氏を総裁にしたら安倍政治に逆戻りです。石破首相のまま、しばらく政局の推移を見守るしか手はない。政治の長期的な停滞が不可避です。

 

 

 

 


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