本業は研究と教育のはず
2015年6月12日
テレビの報道番組をみていると、専門分野があるはずの大学準教授クラスが、専門外のコメント求められ、しろうとでも思いつくような話をするので、われわれ視聴者がしらけてしまうことが多いですね。かれらもこんなアルバイトまがいの仕事は断り、大学にもどり、本職の研究と教育に徹するべきでしょう。
テレビ朝日の「報道ステーション」を定点観測のつもりで、できりだけ見るようにしています。元経産官僚の古賀氏とキャスターの古舘氏の珍しい口論を3月の実況中に拝見しました。その後、処分が決まり、出直しのつもりなのでしょうか、若手の学者が定例のコメンテーターとして登場するようになりました。発言を聞いていて、視聴者をばかにするなという思いをしばしば抱きますね。
3,40代の若手の準教授
気になってしかたがないのは、北大準教授の中島氏、首都大東京の同じく準教授木村氏です。30代、40代の若手です。毎週それぞれ1回、出演し、コメントは合計して、一晩につき4、5分でしょうか。専門外の発言を求められることがしばしばですね。かれらクラスの大学となると、「宣伝にもなるし」程度の認識で、大学が出演を認めているのでしょう。
中島氏は政治学者、歴史学者といい、南アジア地域研究、近代政治が専門だそうです。大仏次郎論壇賞をとり、朝日新聞の紙面審査委員もしています。木村氏は憲法学、公法学が専門で、憲法関係の著作がかなりあり、安倍政権に批判的なひとです。朝日人脈のひとたちでしょう。テレビ映りは悪くなく、若い世代の視聴者とつかむのいいと考えたと思います。
場違いな専門外の発言
なんどもかれらの発言を拝聴していて、場違いな人材起用だと首を傾げることが多いのです。先日は厚生年金情報に対するサイバー攻撃がテーマになりました。中島氏は「もっと早く公表していれば、被害の拡大を防げただろう」と、ありきたりの発言です。別の日、同じテーマで木村氏は「情報を盗む側ばかりでなく、名簿業者から買う側の存在も問題だ」とおっしゃいます。
この程度の指摘は常識ですし、それも、かれらは事前に打ち合わせたであろうメモを見ながらの発言です。かれらの専門分野が情報流出、サイバー攻撃だとは聞いたことありません。テレビのコメンテーターであるからには、一般の視聴者が「そうなんだ」と、思うようなことを言わなければ、意味がありませんね。
異質の法の支配を混同
かれらは得意の分野のテーマになかなか出会いません。ドイツでのサミット(先進国首脳会議)が終わり、首脳宣言は「自由、民主主義、法の支配、人権を尊重する」とし、中国、ロシアの領土変更を強く批判しました。木村氏は「かれらに法の支配を求めるなら、日本は国内でもそうしなければならない。現在、起きている安保法制の違憲論は、法の支配に背く」というような主旨のことを述べました。
「おいおい、待ってくれよ」ですね。中国は南シナ海の岩礁を力ずくで埋め立て、ロシアはウクライナにおける領土拡張で軍事力を行使しています。次元がまったくことなる出来事を同列に論じて、「日本の法の支配」を問題にするとは、困りましたね。中ロを喜ばせる発言です。憲法論の前に、外交問題、安全保障問題を考えてきてほしいところです。日本の安保論争は、国会が主戦場の言論戦であり、武力も行使していません。どうして混同するのでしょうかね。
有名教授がうなずき屋
「声に出して読みたい日本語」が大ベストセラーになり、一躍、有名教授になった教授は専門は教育学です。先日、ビートたけしがキャスターと務める週末定例の報道特集をみていましたら、いつもこの教授が画面の片隅のいるのに気づきました。なにか発言するのだろうかと期待していましたら、「そうですね」とぽつり。いわゆるうなずき屋なのですね。失望しました。
ついでにいうと、「里山の資本主義」という気のきいた本がベストセラーなったシンクタンクの主任研究員は、専門が地域開発です。報道ステーションに登場し、「イスラム国など過激派の暴虐をどう考えますか」と、問われ、「命をとにかく大切にすることです」。あきれました。これがコメンテーターの発言なのでしょうかね。
特にテレビ・ジャーナリズムは、コメンテーターに専門外の分野ついてしばしば発言をさせ、自らの信頼度を下げているという傾向があります。日本のジャーナリズムのレベルが低いのはこんなミスマッチを続けている所にも原因があります。きちんとした発言できる専門家はいるのに、残念なことです。
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