新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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FIFAへの米国の「空爆」は胸がすく

2015年05月31日 | 国際

 まるでマフィア集団を一網打尽

                         2015年5月31日

 

 国際サッカー連盟(FIFA)の大規模な汚職事件を伝える映像で、逮捕、起訴された幹部の面々を見た瞬間、顔つきの悪さから「マフィアの集団の大量逮捕か」と、てっきり思いました。W杯絡みの収賄事件だと知ると、「カネまみれの組織だからね。ありうる話だ」と、納得しました。

 

 米司法省がニューヨークで行動を起したことを発表し、FIFAの会長選挙のために、本部のあるスイス・チューリヒに幹部が集まるところを狙い討ちするなど、「まるで米国が得意とする空爆のようだ」と思いましたね。司法権の行使決定は米国本国、行使した場所は自国領土の域外(スイスなど)ですから、かつてのイラク、最近のイスラム過激派に対する空爆にどこか似ています。

 

 司法権の域外適用の効果

 

 自国の防衛、国益の死守のためには、外国に出かけていって、軍事力を行使することをいとわない米国です。軍事作戦では「それはなんでも行きすぎ」と批判されることは多くても、今回の司法権の行使は「さすが米国だ。米国にしかできない行動だ」と、思った人が多いのではないですか。「この空爆なら支持できる」と私も、胸がすきましたね。

 

 サッカーW杯に対し、私は懐疑的な見方をしてきました。ブログで「W杯の正体マネー至上主義」(2014年7月)、「W杯は野生動物の楽園か」(同)、「W杯は子供の教育に悪い」(14年6月)などをアップしました。例えばハンド(手)を使わない足のスポーツのはずなのに、ジャッジの見えないところでは、平気でルール違反をし、それがまた見所になっているのです。テレビの放送権料がケタはずれで、どう猛でラフな競技を見せることを売りにして、視聴率を稼いでいるのです。

 

 無法ぶりを売り物にして稼ぐ

 

 この時は、競技上の問題に焦点をあてました。今回、明るみになったのは、FIFAビジネスの並みはずれた無法ぶりです。競技も競技、組織も組織です。「スポーツを冒涜する拝金主義による腐敗」、「巨額の利権が生んだ犯罪」と、悪評が噴出しています。ブラッター会長は無罪の人物なのか、会長含め幹部は不正に感づいていながら放置していたのか、大なり小なり幹部は皆、同罪なのか、解明して欲しいですね。

 

 会長は5選決定後、「FIFAの地位を回復する責任を私は持つ」と、発言しました。事務局の幹部は「これを機会に正常化が始まる」とか、いっていました。「よくいうよ」ですね。今、責任をとって辞任、退任したら、芋ずる式に不正が次々と明るみになりますから、留任して、事件をうやむやにするつもりなのかもしれません。腐敗した組織のトップ長く平然と務めるには、このくらい神経の持ち主でなければならないのでしょう。

 

 国際五輪委員会(IOC)は不祥事を機に、委員の定年を80歳から70歳に引き下げ、会長の在任期間を最長で12年にしました。一般企業でもこれが常識でしょう。五輪は国や自治体が絡みますから、組織改革に圧力をかけられたのでしょう。

 

 人ごとのように遠巻きする日本

 

 FIFAはどうするか。キャメロン英首相はただちに「ブラッター会長の辞任は早いほうがよい」と、正論を吐きました。欧州連盟は強硬姿勢を見せておりますから、W杯のボイコットをまずもつらつかせて、圧力をかけてもらいたいですね。日本はどこか、人ごとで、事件を遠巻きにしています。日本サッカー協会の名誉会長で、10年もFIFA理事を務めた人物は「非常に悲しい」、「ブラッター支持だった」といわれる現会長は「会長選で誰に投票したかいわない」という始末です。

 

 メディアを含め、スポンサーや共催企業は多額のスポンサー料、放送権料、協賛金を払っています。その一部が賄賂に流れているのですから、不正にもっと怒るべきです。新聞の社説を拝見しますと、朝日の「FIFAは当局に全面協力せよ」と、そう願ったとしても実効性のないことを主張しています。もっとひどいのは産経で「日本のサッカー界は、正常化の先頭に立て」です。ほとんど意味のない正論は書かないほうがいいのです。

 

 どういう手順で正常化、組織浄化を進めていくのか、です。事件の全容解明の一方で、圧力のかけ方に周到な計算、シナリオが必要ですね。欧州連盟に先頭にたってもらい、米国とも協力し、反現体制派を結集し、現組織を解体するくらいの覚悟がいるのでしょう。

 

 



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