新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
政治、経済、社会問題、メディア論などのニュースをえぐる

インフレ長期化に対する小幅利上げで語られていない狙い

2025年01月25日 | 経済
  財政金融の一体改革が必要 2025年1月25日  トランプ米大統領の就任演説、石破首相の施政方針演説、それと日銀の0.25%利上げが続きました。大統領、首相、中央銀行総裁らの言動は大々的に報じられている。メディアでは表面的なことばかり詳細に報道され、腹の中ではかれらが何を考えているのかが伝わってこない。    彼らは自分に都合のいいことは大声で言います。トランプ氏は「米国第 . . . 本文を読む

日銀副総裁がまたも守秘義務違反まがいの発言

2025年01月17日 | 経済
  そこまで言って委員会 2025年1月17日  植田総裁になってから日銀役職者から、守秘義務違反まがいの発言が飛び出すようになりました。日銀の金融政策は金融政策決定会合(今回は1月23、24日)で決めることになっているのに、それに先立ち氷見野・副総裁が追加利上げを示唆するような発言をしました(14日)。     虚を突いた「サプライズ」で市場を驚かすことを好んだ黒田・前総裁と打って変わ . . . 本文を読む

英明な宰相が不在の現代には凡庸な宰相でよい

2025年01月10日 | 政治
  権力者の暴走より人畜無害がよい 2025年1月10日  世界の現状をみると、「英明な君主」はどこかにいないものだろうか、というはかない希望を持ちます。「君主制」の国は中東の一部にすぎないでしょうから、「英明な君主」を「英明な宰相、政治的リーダー」とおきかえることにしましょう。トランプ、プーチン、習近平氏らは「君主」であっても、「英明」とはほど遠い。欧州では次々に政権交代、与党の敗北が続き . . . 本文を読む

カネでは買えない米国の歴史的シンボル・USスティール

2025年01月04日 | 国際
   経済学から政治経済学になった時代 2025年1月4日  バイデン米大統領は、日本製鉄によるUSスティールの買収計画に対する中止命令を出しました。不満の日本側は法廷闘争も選択肢に含まれると言い、引き続き闘うつもりのようです。    米株式市場では、USスチール株が急落し、「再建困難」で、製鉄所の閉鎖、本社移転が不可避とか言われています。「米国内で所有・運営される強固な鉄鋼産 . . . 本文を読む

日銀による異次元緩和政策の自己検証は「後の祭り」

2024年12月29日 | 経済
  第三者機関抜きの自己弁護 2024年12月28日  日銀はアベノミクスの異次元緩和を中心に、過去25年間の「政策多角的レビュー」をしました。安倍首相・黒田総裁が2013年から始めたアベノミクスは10年に及ぶ前例のない冒険であり、開始してから2、3年後には検証しておかなければいけなかった。今ごろになって公表しても「後の祭り」です。    アベノミクスは安倍政権、その同調者は「 . . . 本文を読む

「紙媒体の帝王」の読売主筆の亡き後の負の遺産は部数激減(終)

2024年12月26日 | メディア論
  新聞の浮沈を握ったネット情報 2024年12月26日  30年間もトップの座にあった読売新聞主筆のナベツネさんに対し、毀誉褒貶、記者と政治家の一体化などの批判がある一方で、言論界、政界、スポーツ界などに残した足跡の大きさを、ライバル紙までが大々的に報道するという異例の波が起きました。    ほとんどのナベツネ論に欠落しているのは、紙媒体がネット媒体に主役を譲っていく歴史の流 . . . 本文を読む

③マキュアベリを愛した読売新聞主筆の人脈作り

2024年12月22日 | メディア論
  歴代大蔵次官との懇談の場も 2024年12月22日  98歳で死去した読売新聞主筆のナベツネさんは、政界、官界、政治部を中心とする記者仲間、野球界、相撲界と人脈は幅広く、私が見聞したのはそのごく一部にすぎません。単に交友関係というより、戦略的に人脈を広げていく姿を垣間見ることができました。    ナベツネさんが重視していたことの一つは、大蔵省官僚に対する人脈作りだったに違い . . . 本文を読む

マキュアベリの君主論を実践していた読売ナベツネさん②

2024年12月21日 | メディア論
  社内では異論を封じる 2024年12月21日  98歳で死去した読売新聞主筆の渡辺恒雄さんは、マキュアベリの君主論を愛読していたということを第一回目で書きました。君主論の「君主は愛されるより恐れられるほうがよい」の箇所を、社内にいる記者たちは何度も聞かされました。私も主筆に怒鳴りつけられた経験が何度かあります。    中曽根氏が固執した大型間接税(売上税)の導入構想(82年 . . . 本文を読む

マキュアベリを愛読していた読売主筆ナベツネさん①

2024年12月20日 | メディア論
恐れられる君主になれと 2024年12月20日  読売新聞主筆の渡辺恒雄氏が98歳で死去しました。すでに人物の大きさ、政界に対する影響力の大きさ、ジャーナリストとしての評価の仕方など、評伝が溢れかえっています。読売新聞社でナベツネさんに直接、接する時期がありました。ナベツネさんは活動領域が広く、その全容を追うことは私はできません。印象に残ったごくわずかエピソードをお伝えすることも、なんら . . . 本文を読む

USスティール買収失敗なら日鉄トップの辞任必至

2024年12月14日 | 国際
  政治的リスクへの感度が欠如 2024年12月14日  日本最大の鉄鋼メーカーによる米国の歴史的象徴・USスチールの買収は、ほぼ絶望的になりました。日鉄の副会長は「年内に買収完了できる」と、楽観的な見通しを語っていました。社運をかけて2兆円を投じる一方、政治的なリスクに対する備えが不足していました。    米国の歴史的象徴を買収し、日鉄の成長戦略の一角にしようとした経営計画が . . . 本文を読む

三菱銀の貸金庫事件で連想する日銀は政府の貸金庫

2024年12月07日 | 経済
  巨額の国債が詰まっている 2024年12月9日  三菱UFJ銀行で行員が4年半にわたって、貸金貨から顧客の現金や貴金属を盗んでいた事件が起きました。被害総額は時価10数億円だそうです。60人分の資産で、減っていることに気づいた顧客の問い合わせで発覚しました。まあ、盗まれていることに気が付かない富裕な利用客が大勢いるのに驚きます。    その後、続報らしい続報がないところをみ . . . 本文を読む

右派の雑誌2誌の驚くほど大きい新聞広告のなぜ

2024年11月29日 | メディア論
  chatGPTに聞いてみた 2024年11月29日  月末になるといつもびっくりするのは、右派雑誌のHANADA、WILLの新聞広告の大きさです。雑誌広告としては、特に産経新聞が破格の扱いで、今月号(26日発売)はHANADAは全㌻(1㌻)広告、WILLは全5段広告でした。全㌻広告はいつものことかどうかは知りません。とにかく超ベストセラー並みです。    私は月刊誌も出して . . . 本文を読む

経済どころではない戦時優先に入った世界情勢

2024年11月22日 | 国際
  第三次世界大戦の予兆 2024年11月21日  日本を含め、各国は財政・経済の健全性を考えるどころではない戦時体制優先の時代に入ってしまったようです。ある統計によると、世界の紛争件数は23年が59件で、戦後最多になったそうです。トランプ氏が米大統領に勝利し、世界情勢はますますその危険度を増していくでしょう。    米国は世界最大の民主主義国でありながら、トランプ氏の政治手法 . . . 本文を読む

大接戦どころかトランプ圧勝で世論調査も惨敗

2024年11月07日 | メディア論
  日本メディアも米国情報を丸呑み 2024年11月6日  大統領選に対する米国の世論調査では、「全米では僅差(誤差の範囲という)ながらハリス氏優勢か。激戦7州は終盤まで激戦」(リアル・クリア・ポリテイクスによる多数の集計値)でした。結果はトランプ氏の圧勝でした。数日を要する可能性もあるとされていた開票結果も一日で終わりでした。ハリス氏は完敗し、世論調査も敗北したのだと思います。 &nbs . . . 本文を読む

衆院内のねじれ、衆参のねじれで政治は長期停滞

2024年10月30日 | 政治
    安倍政治がもたらした敗北 2024年10月30日     衆院選で自民党が歴史的な大敗を喫し、立憲民主党、国民民主党が躍進し、自公政権が過半数割れをしました。メディアには「安倍政治の負の遺産」(政治学者・牧原出氏の指摘)が自民の敗北を招いたという視点が不足しています。政局舞台裏の情報ばかりが溢れ、長期的な分析が足りないように思います。    メデ . . . 本文を読む