半夏生(はんげしょう)という植物をご存知ですか?
半夏とは、季節を表す七十二候(しちじゅうにこう)の一つ。半夏(烏柄杓)という薬草の葉が名前の通り、「葉の半分が白くなって化粧しているような状態になる頃」と言われています。
かつては夏至から数えて11日目とされていたようですが、現在では天球上の黄経100度の点を太陽が通過する日で、毎年7月2日頃にあたるそうです。
先日から幾度となくテレビで放映されていますから、ご覧になった方もいらっしゃることと思いますが、現在、京都 建仁寺の塔頭の両足院が特別公開期間中です。その庭には二百株ほどの半夏生がピークを迎え、葉が真っ白になっています。
先日、私はタイミングよく両足院を訪れることができ、生まれて初めて沢山の半夏生を見る機会に恵まれました。
半夏生はドクダミ科の植物。花ではなく葉の表が白くなってお化粧したように見える植物です。この時期を過ぎると、また元の葉の緑色に戻るのだそうです。
清楚で、かつ凛とした半夏生。しばしの間、見とれてしまいました。
ところで、凛としたと言えば両足院にはもう一つ、現在放送されているNHKの大河ドラマ「八重の桜」で取り上げられている新島八重さん直筆の掛け軸もありました。
八重さんは、この寺の18代和尚の黙雷の人柄に傾倒し、坐禅に通っていたご縁で直筆の掛け軸が床の間にあるのだそうです。
生で見る八重さんの書いた字。「ならぬことはならぬものです」という、あの言葉が聞こえてくるような几帳面な字です。
「会津のジャンヌダルク」とも言われ「動」のイメージが強い八重さんですが、実はお茶にも精通していて、裏千家の千宗室に師事し師範にまでなったとのことで、あまり知られていない「静」の部分を垣間見ることができました。
半夏生が生えているお庭には茶室があるのですが、きっと八重さんはこの茶室でお茶をたて、半夏生を眺めながら黙雷和尚と禅問答をしていたのだろうと彼女が全力で生きた時代を想像した夏の朝でした。
さて、「ならぬことはならぬものです」は什の掟を締めくくる言葉とのこと。什とは会津藩士の子弟は10歳になると藩校に入学することが義務付けられていて、その事前教育として6歳から「什」に所属して、藩士としての基本を学んだとのことです。その「什」が守るべき掟として定められたのが「什の掟」だったそうです。
「ならぬことはならぬものです」
この掟は「什」のみならず、会津藩の心の支えになっていたのだと「八重の桜」を見ていると感じます。組織の理念が社員に徹底されることの難しさを日々感じていますが、一人一人に届く言葉であれば、それは軸となり行動指針にになりうるものだと改めて思います。
(人材育成社)