「日本の企業は組織が縦割りで、お互いに連携しようとせずコミュニケーションすらまともに行なわれない、まるで蛸壺(タコツボ)みたいだ。」といった話をよく聞きます。
もちろん、セクショナリズムという言葉があるくらいですから、欧米の会社でも同じようなタコツボはあります。
日本の企業では、まず組織図を描き、一人ひとりが「自分はここにいるんだ」ということ自覚するところからすべてが始まります。私も、従業員数が単独で2万人もいる企業に勤めていたときに、年に2回ほどある組織変更に伴って回覧されてくる分厚い組織図をめくって、自分の居場所を確認したものです。
その組織図上の居場所こそタコツボであり、それを見た瞬間、従業員に「タコ」としての自覚(習性?)が生まれます。
こうしたタコツボ化は部署間の溝を作り、内側にいる人間にを守ってくれるので、安心して働くことができます。そうなると、タコツボの外に出ることに対する抵抗感が生まれ、ますますタコツボに引きこもるようになります。その結果、様々な弊害が生まれます。
たとえば、他部署との情報のやり取りが低調になり、そこに部署間の利害が絡んでくると仕事の流れを止めてしまうこともあります。
一方、アメリカの企業は、シンプルかつフラットな組織構造を維持しようと努力しているようです。グーグルは、タコツボ化を排除するため、従業員を採用するときに「他者と協働できること」を重視していると言われています。グーグルでの働き方や従業員の採用の方法については、ここでは詳しくは述べませんが、しっかりと利益を上げているところをみると上手くいっているのでしょう。
さて、あらゆる批判の標的と化しているタコツボ化ですが、それほど悪いことなのでしょうか。本当にタコツボは壊すべきなのでしょうか。
私は、タコツボ・システムのメリットは決して少なくないと思っています。
第一に安心して働けることです。外から邪魔されず自分の仕事に打ち込むことができます。第二に、組織として管理しやすいことです。組織図という(物理的に存在しない)骨組みを利用することで、企業が持つ経営資源(ヒト・モノ・カネ)を効率良く配分できます。
そして、日本の企業はそのメリットを最大限に生かして成果を上げてきたのだと思います。
アメリカには、グーグルをはじめ優れたアンチ・タコツボの例がいくつかあります。しかし、日本がそのマネをしてタコツボに打撃を与ても、肝心の仕事の成果につながるとは思えません。
日本においては、どんなことをしても組織のタコツボ化は防げないと思います。
だとしたら、タコツボを壊すのではなく上手く利用する仕組みを新たに作り上げることが必要ではないでしょうか。
(人材育成社)