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魚は頭から腐る

2017年02月19日 | コンサルティング

これは、トルコ(ロシアという説も有力)のことわざです。魚とは組織、頭とはトップを表しています。組織の頭(社長)には、大変強い権限が与えられています。その発言や指示によっては、魚(会社)を腐らせてしまうほど強い影響力があるという警句です。

しかし、残念ながら経営者になるとそんなことは忘れてしまう、あるいはどうでもよくなる人もいます。特に大きな組織になればなるほど、そうなってしまう確率が高くなるようです。

東芝の不正会計事件のニュースを見るたびに、「魚は頭から腐る」という言葉が頭に浮かびます。本来、危機管理はトップの最も重要な仕事のはずです。東芝の経営者は、自分たちが危機を生み出した(会社を腐らせた)ことを理解できないほど腐っていました。

ところで、経営者になった途端に人は腐るのでしょうか。

いいえ、いきなりではありません。人は与えられた権限が大きくなるに従って徐々に腐敗していきます。

「俺がいなければこの部は崩壊するよ。」、「うちの部下はみんな仕事ができないから、俺が細かく指示しないとダメなんだ。」などという言葉を口にする管理職はかなり腐っています。若い社員でも「うちの会社くらい大きくなると国も(うちの会社を)おいそれとは潰せないよな。」などという発言をしたら、腐り始めていると思ってください。

もちろん全ての人がそうだとは言いませんが、経営者や管理職の日常の行動、発言などを注意深く「嗅いで」いるとなんとなく腐り具合がわかります。

では、魚を腐らせない方法はあるのでしょうか。

もっとも簡単で効果的な方法は罰則を強化することです。不正の大きさによって、最大「終身刑」くらいの刑事罰を与えると良いでしょう。また、不正を見抜けなかった監査法人の関係者は「公認会計士資格の剥奪」をするべきです。

ただし、ひとつ大きな問題があります。それは、資本主義が人の欲望を基にしたシステムだということです。

資本主義社会では、人よりも多くの富を得たいという利己心(欲望)が競争を生み、勝者が生き残ることでより大きな富を生み出します。その繰り返しが国全体の富をどんどん大きくしていきます。

厳しい罰則が欲望という「やる気」を押さえてしまうと経済が発展しなくなってしまう恐れがあります。

資本主義が成立する理由を、アダム・スミスは欲望を制御する「道徳心」に求めました。マックス・ウェーバーは宗教的な倫理が「資本主義の精神」を支えていると述べました。また、渋沢栄一の中心思想は「道徳経済合一」でした。

つまり、道徳や倫理という個人の心に中にあるものが資本主義を支えているというのです。組織のリーダーとっては、頭の良さも大事ですが「心の良さ」はもっと大事であるということです。

大げさかもしれませんが、働く人たちの道徳や倫理によって社会が成り立っています。しかもそれは、学校教育では身に付かないものであることは、不正を起こした大企業のトップの多くが学校秀才であることを見てもわかります。

「道徳経済合一」は資本主義にとって永遠の課題です。

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