「コンサルタントになるには地頭(じあたま)がよくないとダメだそうです。」外資系コンサルティング会社への就職を希望しているA君がそう口にしたとき、私は「地頭がいいって何だろう?」と考えてしまいました。
知識を上手く引っ張り出して組み合わせ、正解を導き出す能力に優れた人は頭がいい人です。それは学校の成績がいい人でもあります。
たとえば、中学の数学の教科書に出てくる公式の数は高が知れています。丸暗記しようと思えば誰でも可能です。しかし、基本的な知識(公式)を使って、限られた時間内に問題を分解し、整理し、組み合わせて問題を解く力は単なる暗記力ではありません。
「分解して、組み合わせて、当てはめる」能力こそ頭のよさを表しています。外資系のコンサルタントの方々は、まず例外なくこうした能力が優れています。そうした方と話す機会があったら「中学の頃、数学が得意でしたか?」と聞いてみてください。例外なくYesという答えが帰ってくるはずです。
ただし、頭がいいというのは必要条件だとしても、十分条件ではありません。
地頭がいいと言われるためにさらに必要なもの、それは仮説構築力だと思います。仮説構築力とは、「仮説=仮の答えを作り出す力」のことです。問題すらはっきりしていない状態で、とにかく「仮」の答えを考え出す力であるといえます。
問題自体がはっきりしていない状態というのは、ビジネスの現場ではよくあることです(学校の試験でそれがあったら困りますけれど)。仕事を進めていくうちに、いつのまにか上手くいかなくなって、最後には行き詰ってしまったという経験は誰もがお持ちだと思います。そんなとき、ほとんどの人はそこで思考停止になってしまいます。学業が優秀だった方は、こういう「問題がはっきりしない問題」を苦手とする人が多いようです。
もやもやした問題に直面しても「とりあえず問題はこうだ!」と決めてしまって、仮説を導く。そして、間違っていたらまた問題の定義に戻ってやり直す。これを繰り返して最終的には「正解」にたどり着く。これが地頭のよさなのではないでしょうか。
冒頭のA君は「頭はいいけど、地頭はいまひとつ」という人物です。残念ながらコンサルタント向きではないなあと思っています。そのことをA君に話すと、彼は納得したようでした。結局彼はコンサルティング業界をあきらめて、大手の重工業の会社に就職しました。
とはいえ、仮説構築力は生まれつきの才能ではなく、練習で身に付けることが技術です。
もしA君がコンサルタントになりたいと思うなら、スキルを身に付けるための練習を重ねることで、十分にその可能性があります。
なにしろ彼は、必要条件は十分に満たしているのですから。