中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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その経営理念は絶対に社員に浸透しません(上)

2017年07月12日 | コンサルティング

経営理念とは「経営者の経営哲学や信念、行動指針や目的などを明文化し、その企業が果たすべき使命や、基本姿勢などを社内外に向けて表明するもの(Wikipedia)」です。

「理念のない会社は生き残ることができない」という声はよく耳にします。特に経営コンサルタントは「経営理念は会社の土台だから、理念のない会社は崩壊する!」と言って、経営者を脅したりすることもあります。(そこで、すかさず高額の”理念作りコンサルティング”を提案するわけです)

経営理念ができあがると、次に出てくるのは「理念が社員に浸透していない」という問題です。「問題」は経営コンサルタントの大好物です。「せっかく作った理念が浸透しないのは、経営者であるあなたの責任です」と言って、喜び勇んで”経営理念浸透コンサルティング”について説明を始めます。

こうして時間とお金をかけて作った経営理念がホームページや会社案内に掲げられるわけですが、その結果はどんなものかと言えば・・・

従業員に聞いてみると「経営理念?ああ、一度覚えさせられたけど・・・なんだっけな・・・優れた製品で・・・社会に貢献して・・・グローバルがどうとかこうとか・・・。」といった具合です。

もちろん、毎日の朝礼で社員が唱和すれば記憶には残るでしょう。しかし、理念は単なる暗記項目ではないはずです。従業員の日々の仕事に意味を持たせ、「自分が勤めている会社はこういうことを実現しようとしているんだな」という実感を持たせるものでなければなりません。

それができない理由は、抽象的、規範的な言葉だけで理念を作っているからです。

当社も、経営者の方々から「経営理念が社員に浸透しない」という悩みを打ち明けられることがあります。その会社の状況や業界によっていろいろな解決策をお伝えするのですが、一番効果が上がるのが次の方法です。

「経営理念を廃止してください。」

大抵の場合、あからさまに嫌な顔をされます。「理念なき会社になれというのか!」、「高いお金をかけてようやく決まったのに!」等々、怒りを交えて即座に却下されてしまいます。

ところが、怒り出す前に「なぜ廃止するんだ?」と質問をされる方がいないわけではありません。その問いに対しては、次のように答えます。

「浸透しないのではなく、浸透できないものを作ったからです。」

「とりあえず印刷物はそのままでも構いませんが、ホームページから消してください。そして全従業員に対して、”当社の経営理念は浸透していなかったので、当面廃止します。社外の方に聞かれたら正直に、当社には経営理念がありませんと答えてください”というメッセージを送ってください。」と続けます。

「そんなことをして大丈夫か?」

「はい。大丈夫です。少なくとも3ヶ月くらいは放置してから、全従業員にアンケート調査で、経営理念がなくなって仕事に影響が出たかどうかを調べてください。」

「・・・そうか。なくても何の支障もないということか。」

「いいえ、違います。支障がでるんですよ。だから、そこから経営理念づくりが始まるんです。」

「え?どういうこと?」

「詳しくは次回に続きます。」

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