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満足基準と最適基準

2017年07月23日 | コンサルティング

働き方改革や仕事の生産性向上に関する仕事を担当させていただいていると、企業における様々な問題や課題が見えてきます。

その一つに、仕事の制約条件である「QCD(quality品質、Costコスト、Delivery納期)」のうち、品質(quality)を必要以上に重要視してしまうことがあると感じています。

たとえば、先日お会いしたある受講者の話では、お客様に企画書を提案する際に事前に上司の確認を受けるそうです。その際、上司が細かいところにこだわって修正を要求してくるために、想定以上の時間がかかってしまうことが多いとのことでした。

もちろん社外に提出するものですから、間違いがあってはならないのは当然です。しかし、企画の本筋とは別に字面の一字一句こだわられるために、何度も何度も修正しなければならなくなるそうです。正直に言って上司に確認をしてもらうことが面倒だと感じてしまうとのことでした。

これは、まさにH・A・サイモンの意思決定のメカニズムにおける「最適基準」と「満足基準」の考え方が参考になる事例です。

H・A・サイモンの考え方は、最適の選択肢を探す「最適基準」と、一定の水準を満たしていたらよしとする「満足基準」に分けられます。

このうち、「満足基準」とは複数の案の中から1つを選択したり、あるいは1つのプロジェクトの実行に関する意思決定をしたりする際に、仮に最大の成果を獲得できなくても、意思決定者自身がある程度満足できるような成果ならば、それで満足しようという意思決定の原理です。マネジャーは通常、「満足基準」で意思決定していると述べていますが、どうやら先の上司はこの例には当てはまらないようです。

そして、これは組織の仕事の様々なところに該当しうる事象です。

たとえば、ある製品の開発の際、開発部門がハイスペックにこだわり過ぎたことで価格が高くなってしまい、売りにくいものになってしまった結果、営業部門のみならず市場からも結局受け入れられなくなってしまったということはよくある話です。

そして、働き方改革や仕事の生産性向上の視点からこの話を見てみると、必要以上なハイスペックを求める「最適基準」の追求が、結果として組織の残業時間を必要以上に長くしてしまっている面があるように感じます。

大きな課題である残業時間の削減のために、先ずは個々の企業における「満足基準」をきちんと定義することが大切なのではないでしょうか。

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