1年前、ある大手食品商社の人事部長から中途採用についてのご相談を受けました。「昨年は3人中途で採用したのですが、半年経たずに1人辞めてしまいました。」「仕方がないのでまた人材紹介会社に募集広告を出しています。」「ここ3年で6人も辞めています。まるで広告会社を儲けさせるために採用をやっているようで・・・どうしたものでしょう。」
「退職者に、なぜ辞めるのかその理由を聞いていますか?」と私が尋ねると、「もちろんです。とにかく退職理由を徹底的に聞き出しています。」と答えました。
「今までにお聞きになった退職理由ですが、共通点はありませんでしたか?」
「はい。ほとんどが ”思っていた仕事の内容と違うから”とか、”もっと大きな仕事がしたい”といったものでした。当初の期待と実際の仕事とのミスマッチですね。」
「なるほど。しかし、ちょっとおかしいと思いませんか。中途採用ですから経験もそれなりに積んでいますよね。それに御社のような専門商社を受けるなら業務内容を知らないはずがありません。まして募集職種は営業オンリーでしたよね。」
「ああ、確かにそうですね。基本的に営業経験者の採用ですし、当社の業務については全員がよく知っていました。」
「それともうひとつ。退職者の上司だった方は、一切慰留をしなかったのではないですか?」
「そりゃそうですよ。辞めたいと口にした段階で慰留しても無駄ですから。」
「いえ、私が思うに退職した人は上司も慰留したくない人物だったのだと思います。」
人事部長はちょっと驚いたような顔をしましたが、思い出したようにこう言いました。
「そういえば、昨年の退職者の上司だったA支店長は私に、”ここだけの話だけど、今度の中途採用のBくん、大手のC社にいたそうだけど、ありゃ「ハズレ」だよ。人事部はちゃんと選んだの?”と言われたことがありました。その時は、単なる愚痴だろうと思って聞き流していました。」
「部長、それ本音です。御社のレベルに達していない人を採用してしまったのです。特に営業職の場合、自分の業績を”盛って”話す人が多いですから。それも大手企業にいた人にその傾向があります。」
「そうですか。言われてみると採用者数の充足自体が目的になっていたかもしれません。」
「人手不足の折、大変だと思いますが、採用に当たっては時間をかけて何度も面談し、十分に実力を調べ尽くしてから採用してください。」
「でも、しつこく面談を重ねると応募者が嫌がりませんかね。」
「はい。レベルの低い応募者は嫌がります。徐々に化けの皮がはがれるからです。逆にレベルの高い人はたくさん話してくれるようになります。」
「今後は調べに調べて、質問に質問を重ねて、レベルに達していないと判断したら人数が充足していなくても、いったん採用広告を打ち切ってください。その方が良質の応募者が集まります。」
それからしばらくして、この会社の「キャリア採用」広告を見なくなりました。
これが今後の会社の業績にどう影響するのか、はっきりするまでにあと数年はかかるでしょう。
ひとつだけ言えるのは、少なくとも「ハズレ」を引くことはなくなったということです。