「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
与えられた仕事をきっちりこなす。手抜きや妥協ができず、融通が利かない。会社にはこうした人が、少数ですがいるはずです。いわゆる完璧主義(以下、完璧主義「者」と同じ意味とします)です。
完璧主義の人はまじめで仕事熱心なので、評価は高いと思います。どんな職場でも、言われたことをきちんとやる人は上司から信頼され、部下から頼られることは間違いありません。
非常に頼もしい完璧主義ですが、役職が高くなるにつれ、だんだんとその比率が小さくなっていきます。
いちばん完璧主義が多いのは係長、主任クラスです。課長職になるとその比率は大きく下がり、部長職なるともっと少なくなります。役員クラスに至ってはゼロです(あくまでも個人の感覚です)。
なぜそうなるかは、考えてみれば分かると思います。完璧主義は、答えのはっきりしない曖昧な問題の処理に向いていないのです。
役職が高くなればなるほど「あちら立てればこちら立たず」、「ほとんど情報が無い状況で急いで判断を下さなければならない」、「目的がはっきりしない上、手段も決まっていない」といった仕事の割合が増えていきます。完璧主義ではとても対処できません。
逆に考えれば、目的がはっきりして手段もわかっている仕事に対しては完璧主義は有効に働きます。ですから、経営者の皆さんは完璧主義の特性を十分理解して仕事を与えなければなりません。
「そんなことは十分わかっているよ」とおっしゃるかもしれません。
しかし、私の知る限りよくわかっていない経営者の方が多いようです。それは「誰が」完璧主義なのかということではなく、「何が」完璧主義なのかということです。
「A君はいつも遅くまで職場に残ってきっちりと仕事を仕上げている。あいつは完璧主義だ」ある会社の役員さんが、1人の係長を評してそう言いました。
しかし、監督者研修に参加したその人(Aさん)を観察したり、同じグループの他のメンバーの話を聞いたりしていると、どうやらそうではないことが分かりました。
とりわけ、研修でAさんと同じグループになったある参加者の言葉が強烈でした。「Aさんは効率が悪いだけ。しかも頑固なので迷惑している」。
本当の完璧主義は「完璧=100%」とは考えません。QCD(品質、コスト、納期)の制約の中で、自分の力を最大限に出し切るのが正しい意味での完璧主義です。
「遅くまで仕事をしている」、「絶対に妥協しない」、「最後までやり遂げる」といった評価は概ね主観的なものです。
遅くまで仕事をしているのは能力が無いから、妥協しないのは聞く耳を持たないから、やり遂げるのは自己満足したいだけ・・・なのかもしれません。
経営者、管理者の皆さんには「何が」完璧主義なのか、どういう「基準」でそれを測定できるのか、十分に考えていただきたいのです。
ちなみに私の経験から言うと、本当の完璧主義は100人に1人です。もし10人いると思ったら、9人は「そう見えるだけ」か「自称」に過ぎません。
そう考えると、残念ながら完璧主義など幻想だと思った方が良いのかもしれません。