「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「やる気がない部下にどのように指導したらよいのか?」、「反抗的な部下への指導法を教えてほしい」
これは弊社が管理職を対象にした研修を担当させていただく際に、必ずと言ってくらい受講者から尋ねられる質問です。
組織を取り巻く環境は以前にも増して急速に変化していることから、部下の育成もそれに応じた新しいやり方に対応していかなければならないという話もよく聞きます。たとえば、今時の若者への育成ポイントという部分もあるかと思いますが、一方で人を育てることの重要性や押さえるべき事柄は、いつの時代であっても大きな違いはないのではないかとも思うのです。
エリザベス女王のご逝去にともない先日放送されていた「英国王のスピーチ」という映画をあらためて観ました。吃音症に苦しむ英国王ジョージ6世と、その治療に尽力したオーストラリア出身で平民の言語療法士 ライオネル・ローグの2人の実話に基づく映画です。
吃音症に苦しむジョージ6世(当時はヨーク公)は様々な医師の治療を受けるのですが、そのどれもうまくいかず、結果ライオネル・ローグの一風変わった治療を受けることとなるのです。
当初はローグに対して懐疑的であったため、時に反抗的ともいえる態度を示していたジョージ6世でしたが、ローグはジョージ6世に対して信頼と対等な関係を求め、時に厳しく接しながらも、「必ずできる」、「できるとも」と繰り返し励まし続けたのです。
クライマックスのジョージ6世の戦争スピーチのシーンで、ローグは「頭を空にして私に言うんだ」、「私だけに向かって話して」などと落ち着かせるように、手を上げ下げさせて非言語もフル活用して全身で言葉がけを行ったのでした。
さらに、ジョージ6世が語る幼少期の辛い体験に対し、ローグは「辛かっただろう」と心から共感することなどを通じて、お互いの信頼関係も築かれていきます。
全身全霊で行うローグの指導でしたが、中でも最も大切であり、人の育成においての肝だと私が感じたのが、「相手を信じ『必ずできる』という言葉を繰り返しかけたこと」だと考えています。
これは教育心理学でいうところの「ピグマリオン効果」に通じる話だと思います。ピグマリオン効果とは、相手から期待されていると感じるとやる気が上がり、スキルや知識が身に付き、人は育つというものです。
まさに、ローグがジョージ6世に行った「相手を信じること」は、ピグマリオン効果が働いていたということだと思います。
私たちは、部下をはじめ人を育成する際、相手がこちらの思うような状態にならないと、つい「この人はだめだ」とマイナスのレッテルを張ってしまいがちになります。しかし、そうするとそれが相手にマイナスの感情として伝わってしまい、相手はますます育たないということになってしまうのです。
人はこちらが期待すれば期待した分だけ育ち、逆もまたしかりということです。人を育成する際には、ぜひ相手は「いつか必ずできるようになる」と信じて行っていただきたいと思います。
そして、できなかったことができるようになった際には、ぜひそれをはっきり伝えていただきたいと考えています。この映画でも、ジョージ6世が吃音を発せず行えた戦争スピーチ終了後に、ローグは「とてもよかった」と心からの賛辞をジョージ6世に送り、その後は遠くから姿を見守っていました。
指導の際には、相手に対して必ずできるようになると期待すること、そしてできるようになったときにはそれを承認すること。この映画を通して、育成の際のポイントを改めて確認したように感じました。(冒頭の写真はWikipediaより)