「上司に挨拶をしても返事がないのです。それでも挨拶はし続けなければなりませんか?」
弊社では、毎年秋になると4月に入社した新入社員のフォロー研修を担当させていただく機会が増えます。研修では、新入社員が仕事を進めていく中で困っていることや、ビジネスパーソンとしてのマナーやルールなど、半年間の経験の中で感じた疑問点を解消させることも目的の一つです。
その際、受講者から挙げられることの一つに、「上司に挨拶をしても、返事が返ってこない」があります。
新入社員研修や若手を対象にした研修では、「挨拶をしっかりとすることは、ビジネスにおいて大変重要な意味を持っています」と伝えています。なぜならば、挨拶はコミュニケーションの入り口だからです。「挨」「拶」という漢字には、心を開いて相手にせまるという意味や、「私はあなたを受け入れます」という意味もあります。当然のことながら職場は挨拶で始まり、挨拶で終わるのですから、挨拶をしなかったり無視したりすることはマナー違反でもあるわけです。
しかし、先述の通り職場の中には挨拶をしない人がいるのも事実です。コミュニケーションの入り口である挨拶をしても相手から返答がないと、人はどういう気持ちになるのでしょうか?それがたまに会う人であるならば、いたし方がないと割り切ることもできるかもしれません。しかし、毎日会う上司にそれをされたら、当然のごとく上司への信頼感は失墜し、部下はやる気を失います。管理監督職は、組織の目標を達成するために部下に最大限の成果を出してもらう必要があるわけですが、このような上司は自ら部下のやる気を削ぐようなことをしているわけです。
研修中にこのような話をしてくるときの若手社員の表情はとても辛そうであり、その心情はいかばかりかと思います。しかし、上司からの返事がないからといって、そこで挨拶を止めてしまえば同じことの繰り返しになってしまうことから、辛い気持ちは受け止めつつ、「そういうあなたの姿を見ている人が必ずいるから、シンパを増やしてほしい」ということをお伝えしています。また、外部の人間である私ができることには限りがありますが、研修のご担当者にその旨を話し、上司にそれとなく伝えていただければとお願いをすることもありますが、実際のところそれが精一杯です。
こうした状況が続けば、いずれこの若手社員は上司に愛想をつかして組織を去るか、あるいは同様の行為をまねて、次に新人が入ってきたら挨拶をされても返事をしない先輩になってしまいかねません。
古今東西、組織におけるコミュニケーションの難しさが語られ続けていますが、たとえコミュニケーションを活性化させるためのデジタルツールを導入したとしても、入り口である挨拶ができなければ、そもそもコミュニケーションが始まることすらないわけです。
「組織を活性化させたい、業績を向上させたい」と本気で考えるのであれば、まずは全員がしっかり挨拶をできるようにすることから始めるべきであり、経営者の皆さんにはまずはそこから真剣に取り組んでいただきたいと思います。