「99人以下の中小企業の社員が辞めずにイキイキ働くようになる」を実現する人材育成社です。
「上司に相談しても無駄なんですよね。これまでに何度改善提案をしても、結局聞き流されてしまっているようで、一向に取り上げてもらえないんです」
これは先日、弊社が担当させていただいた主任を対象にした問題解決研修の時に、一人の受講者から聞いた言葉です。
この企業では、問題解決研修を数年にわたって行っています。それは、問題意識を高め主体的に問題を発見し、課題解決をしてほしいという考えに基づいていて実施しています。
冒頭のような改善提案は、研修に繰り返し出席することで問題意識が高まり、その結果職場や担当している仕事に改善点が見つけられるようになっているのですから、研修の効果が出ていると言えるわけで、会社としては本来とても喜ばしいことのはずです。
実際に、職場の問題を解決しようと動くとすると、一人で解決することはなかなか難しいことが多いです。
たとえば、前工程や後工程も巻き込んで問題を解決するためには、周囲の協力を仰ぐ必要があります。しかし、主任である彼が単独で他部署に協力を求めるのは難しいために、先ず上司に相談をしたわけなのです。
しかし、結果は上司に話を聞き流されてしまい、すっかりやる気をなくしてしまったそうです。
ここで、話は変わりますが「ワークエンゲージメント」について考えてみたいと思います。
ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して感じている充実感や、就業意欲を総合的に表す指標と言われています。また、同時にワークエンゲージメントは健康度を示す概念の一つでもあり、最近では多くの企業が重視している指標の一つです。
ワークエンゲージメントに関しては、複数の機関が国際的に調査していますが、いずれの調査を見ても日本は最下位という結果が出ています。
確かに、冒頭の例のようにせっかく部下が研修で学んできた内容を実務で活かそうと上司に働きかけたとしても、その上司が協力をしないばかりか、話を聞き流すようなことをしてしまうというのは何とも困った話です。
これでは、部下のやる気を削いでしまうばかりでなく、同時に上司に対する信頼も失われてしまいかねません。そしてその結果、部下が「二度と改善提案なんてするものか」と考えてしまうとことにもなりかねないのです。
実際、冒頭の例では「少なくともこの上司には二度と相談はしない」と、残念そうな表情で言っていました。こうなっては、ワークエンゲージメントの向上はとても難しい状況と言えます。
それでは、この上司はなぜ彼の提案に対して真摯に向き合わなかったのでしょうか?
話を聞いたところから想像すると、その上司は非常に忙しく、席にいることは滅多にないとのころです。上司の方からすると、部下の話をゆっくり聴いたり、改善提案に対して具体的な指示を出したり、フォローをしたりする余裕がないのも事実なのかもしれません。
しかし、自社のワークエンゲージメントを向上させようとするのであれば、すべてとまでは言わないまでも、その大きなカギを握っているのは上司のはずです。
部下からせっかく改善提案を受けたのであれば、どんなに忙しかったとしても10分でも15分でも何とか時間を捻出して、提案に真摯に向き合う。部下に仕事の充実感を味わってもらうためにも、先ずはそこから始めていただきたいと思います。