「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「では、多数決で決めましょう」
弊社が研修を担当させていただく際には、テーマにかかわらず多くの場合、講義と演習を繰り返しながら進めていきます。演習では3名から6名で1つのグループになっていただきますが、初対面の人同士のグループでも最初は少し遠慮がちにしていても、演習を進めていく中で徐々にうちとけて意見交換が盛んになっていきます。そのためグループ演習に取り組んでいただくことは各テーマの理解を深めるだけでなく、チームワークを作り上げる上でもとても有効な手段です。
しかし最近では、そのグループ演習での討議の様相が少々変わってきているように感じることが増えてきています。それは、メンバー同士で積極的に意見交換をしたとしても、最終の意見のまとめはそれまでの議論の経緯とは別に、多数決で決定することが多いのです。
多数決は民主主義の基本と言われているように、多くの人が子どものころから慣れ親しんできている方法だと思います。たとえば小学校の学級会などで何かを決める際には、みんなで意見を出し合った後に多数決で決めるという経験をした人はたくさんいると思います。このように、多数決は物事を決定する際の最も基本的な方法ということなのでしょう。
しかし、前述のとおり最近ではグループ討議を観察していると、「最後は多数決で決めればよい」ということを前提に話し合いをしているように見えることが少なくありません。たとえば、演習であるテーマについて話し合いをしてもらうような場面では、まず一人一人順番に意見を言い、それを聞いた周囲のメンバーはその意見に「いいね」や「なるほど」などと同調はするのですが、その意見に対して「なぜそのように考えたのか」を聞いたり、それに対して「自身はどのように思うか」などを発言することは少ないのです。こうした結果、議論の中でメンバー間の実のあるやり取りが少なく、最後のとりまとめも多数決で決めるため、あまり議論が深まらないということになってしまいます。
多数決は一見公平な方法のようにも見えますが、よく言われるように、多人数が支持する意見が必ずしも正解とはかぎりませんし、少数意見に耳を傾けないことにもなってしまかねないという一面も持っています。日本人の多くが多数決を好む理由には、文化的な要因や社会的背景、歴史的な影響などが関係しているようにも言われています。確かに周囲との衝突を避けてうまくやっていくことを重視するあまり、自分とは異なる意見に対して自分の考えを主張することを控えてしまうということが少なくないように思います。こうしたこともあって、結論を出す場合にもわかり易くかつ反対も出にくい多数決という方法を選択するということなのかもしれません。
仕事に限らず、コミュニケーションの重要性は日々様々な場面で叫ばれていますが、そのためにはまずは積極的に対話をしていくことが大切です。意見の異なる相手ともお互いの立場や意見の違いを理解し、その上で簡単に多数決などに流されることなく一致点を探っていくという努力が必要不可欠だと思うのです。
以前、どこかのメディアで「最近の若い人は周りから浮いてしまうことをおそれるあまり、自らは強い主張をしない」というような話を聞いたことがあります。「出る杭は打たれる」ことを恐れずに、意見の異なる相手とも積極的に対話していくことを意識していくことが大切なのではないでしょうか。