「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。」これは吉田松陰の言葉です。この言葉を知る経営者の多くは「今の若い人には夢がない。だからすぐ挫ける。もっと大きな夢を持ちなさい」ということを口にします。
では、夢とはなんでしょうか。また、経営者の言う夢と企業のビジョンはどう違うのでしょうか。私の考えは次の通りです。
夢は好き勝手に口にできるもので、達成するための責任は一切ありません。一方、ビジョンは夢に向かって実行するべき計画であり、達成することは経営者の責任です。「ビジョンは崇高な理想でもなければ、鼓舞するための言葉でもない。実用的な手段なのである。」(出現する未来 、P. センゲ 著)という言葉もあります。
夢を語る経営者の方々に「では、ビジョンはありますか?」と聞くと、多くの場合はっきりとした答えは返ってきません。どうやらビジョンの重要性が認識されていないようです。
仮に夢が「業界ナンバーワンになる!」ならば、それに向かって「何をするのか」がビジョンです。
たとえばANAグループのビジョンは「お客様満足と価値創造で世界のリーディングエアライングループを目指す」です。「世界のリーディングエアライン」となるための手段として「お客様満足と価値創造」が示されています。
人材育成においてもビジョンは重要です。会社が掲げるビジョンが夢に繋がっていることが理解できれば、たとえ夢と現実に大きな距離があっても社員は安心して働くことができます。
経営学者の高橋先生(高橋伸夫・東京大学大学院経済学研究科教授)が「未来傾斜原理」※という説を唱えています。簡単に言うと「(人は)過去の実績や現在の損得勘定よりも、未来の実現への期待によりかかって現在の意思決定を行う」という考え方です。ビジョンとは、社員がよりかかることができる「将来への期待」なのです。
これを人材育成にあてはめれば、社員の多くはビジョンという将来に対する「見通し」があるからこそ、今知識やスキルを身に付けようとする、ということです。
「夢」ばかり語る経営者に社員はついていきません。かといって、目先の数字ばかり口にする経営者では社員が疲れ切ってしまいます。
夢と現実の架け橋がビジョンです。
経営者はビジョンを示しましょう。
(当社はビジョンつくりのお手伝いもいたしますので、関心のある方はご連絡ください)