ハイパフォーマーとは仕事の能力がトップクラスの人材のことです。いわゆる「仕事ができる人」、高い業績を残すことができる人です。一方、仕事ができない人、「組織のお荷物」をローパフォーマーと言うこともあります。
組織内の人材の能力が正規分布しているとすれば、±1σ(1シグマ、1標準偏差)は平均を中心にして全体の68.28%を占めます。そこに入る人材は、強いて言えば「普通の人々」です。そして、それ以外の上位15.86%がハイパフォーマー、下位15.86%がローパフォーマーとなります。
さて、人材育成において力を入れるべき対象はハイパフォーマーでしょうか、ローパフォーマ―でしょうか? 私は「普通の人々」つまり1σの人材に育成の重点を置くべきだと思います。
今後、成果主義が制度的にも推進されるようになれば、ハイパフォーマー層の流動性はますます高まっていきます。成果と報酬がはっきりと連動すれば、より高い報酬を求めて組織を移っていくインセンティブがハイパフォーマーに働きます。そうした人材にコストをかけて教育することは、組織にとっては一種のリスクになります。
一方、ローパフォーマー層に対する教育投資は、組織にとってはかなり効率が悪いものになります(効率が良ければそもそもローパフォーマ―層ではないはずです)。したがって、育成対象としての優先順位は低くなります。この点については、ローパフォーマー層に対する公的機関による無償または廉価な職業訓練システムを作ることで組織の非効率性を回避し、合わせて雇用のセーフティーネットの一助とするべきだと考えています。
以上のことから、必然的に1σの人材こそが最も重視すべき育成対象であることがわかります。
7割近くの人間を教育することは時間と手間とコストがかかりますが、1σの人材がたとえ5%でも能力が上がれば組織としてはかなり大きな力になります。
もちろんハイパフォーマー全員が転職して行くわけではないでしょうから、選抜者教育によってエリートたちを鍛え上げることも悪くはありません。
しかし、少数のハイパフォーマーを育てるよりは、1σの人材をレベルアップする方が組織にとってより重要なことではないでしょうか。
(人材育成社)