ブラックスワンといっても映画の話ではありません。ブラックスワン(黒い白鳥)は、オーストラリアに生息するコクチョウという鳥です。ハクチョウ属ですから、色が黒いという以外は白鳥と同じです。
むかし英語には、無駄な努力のことを指して「黒い白鳥を探すようなもの」という表現があったそうです。転じて、あり得ない事態が起こることを「ブラックスワンが来た」と言うこともあります。17世紀末にコクチョウが発見されたときは皆が「あり得ない!」と驚いたことでしょう。
ブラックスワンは時々私たちの前にも現れます。
1998年にLTCM(Long-Term Capital Management)というヘッジファンド(資金運用会社)が破綻したのも「ブラックスワン」のせいでした。
LTCMは「ドリームチーム」と呼ばれていました。なにしろ取締役にマイロン・ショールズとロバート・マートンというノーベル経済学賞コンビがいたくらいです。そういうわけですから、LTCMには世界中の機関投資家や大金持ちから大量のお金が集まってきました。
ところが運用をはじめて3年後の1997年にアジア通貨危機が起こり、1998年にはロシア財政危機が起こります。ロシアは短期国債の債務不履行を宣言し、LTCMも大打撃を受け、あっという間に破綻してしまいます。
LTCMはロシアが債務不履行を起こす確率は100万年に3回だと計算していたそうです。まさに「ブラックスワン」ですね。
これに似たような確率計算の話、どこかで聞いたことがありませんか。
東日本大震災と福島の原発事故のときも、同じような「確率的にはあり得ないことが起きた。」という言葉が聞かれました。
しかし、起きるときには起きるというのが、現実の姿でした。
確率の話になりますが、私たちの住む世界で起きる様々な事象は概ね「正規分布」に従っています。しかし、分布の両端はどうやら「べき分布」になっているようです。(べき分布については後日書きたいと思っています)
どのあたりから「べき分布」になるのかはよく分かりませんが(3σあたり?)、ブラックスワンが100万年に3回程度しか現れないというのは、あまりにも甘い見方ではないでしょうか。
企業研修では「ポジティブシンキング」が大いに賞賛されていますが、企業で働く人たち全員が安易なポジティブシンキングに染まることは極めて危ういことだと思います。
あなたの会社の中で、ネガティブな考え方をする人がいたらそれは「ブラックスワン」のことをきちんと考えている貴重な人材かもしれません。
(人材育成社)