「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「部下に注意したり指摘したりする際に、『私自身はできているのだろうか?』と考えてしまうのです。」
これは、先日ある組織で中間管理職として活躍している女性Aさんから聞いた言葉です。Aさんは入社後すぐに研修の部署に配属されたため、そのご縁で私はAさんと知り合いました。
Aさんは、バリバリとリーダーシップを発揮するというよりも、職場のメンバーの間をうまく調整したり、ご本人は気づいていないかもしれませんが、積極的にコミュニケーションをとることで温かな雰囲気の場を作るタイプです。そうしたこともあって外部の人間である私もAさんをはじめ、同じ組織の方たち数人と定期的に交流する機会を持たせていただいてきました。
そのAさんも入社後27年が経過し、今では課長補佐として働いています。先日久しぶりにお会いする機会がありましたので、女性管理職としての悩みについて尋ねてみました。そのときにAさんから聞いたのが冒頭の言葉です。これまでAさんが多くの人と接する姿を見てきた私は、Aさんは言うべきときに言うべきことを、きちんと穏やかに発言できる女性だと考えていましたが、そこに経験も加わり、Aさんらしい管理職になっていることが伝わってきました。
管理職として部下や後輩を注意したり、叱ったりしなければならない場面で、Aさんのように「自分はできているのだろうか」と内省することができる管理職は、どれくらいいるのでしょうか?一般的には、部下等の行為に対して「あるべき論」から指摘をする人が圧倒的に多いのではないかと思います。内省(reflection)とは、自己を深くかえりみること、自分自身と向き合い、自分の考えや言動を振り返り、気付くことを自ら観察することですが、Aさんは部下と接するときに、まさに内省をしているのです。
冒頭の発言の後に、私から「注意したり、指摘したり、叱ったりしなければならないとき、たとえば部下が遅刻を繰り返すようなことが起きた際には、どうしていますか?」と伺ったところ、Aさんは少し考えてから、「遅刻をした理由をまず質問します。遅刻するには、何らかの理由があるはずだと思うから」と答えました。
弊社が行う研修では、上司が部下を注意したり叱ったりする際には、まず質問し(事実を確認する)、そして相手の言い分を聞くステップを踏むことが大切であるとお伝えしていますが、Aさんはまさにこれを自然に行っていたのです。これはAさんが経験から学んだことなのか、元々の人柄なのだろうかと思いましたが、おそらくは両方なのだと思います。このように考えると、Aさんは自分ならではのリーダーシップをしっかりと発揮されていると言えます。
我が国では、女性管理職の割合が少ないことが以前から問題として顕在化しています。これは、Aさんのような力を持つ女性がちゃんといるのにも関わらず、管理職というポジションに就いていない組織がいまだに少なくないことを表しているのではないでしょうか。
私は、Aさんのように人柄をフルに発揮して組織で活躍する女性が増えれば、その組織はより活性化し、結果、組織の業績等も上がっていくのではないかと考えています。こうした女性リーダー・管理職がもっともっと増え、活躍できるようにするために、組織はどのようにすればよいのか、あらためてしっかり考える必要があるのではないでしょうか。