「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
最近の報道によると、厚生労働省は「カスタマーハラスメント」(以下、カスハラ)に対して、従業員を守る対策を企業に義務付けるための検討に入ったとのことです。
カスハラとは、直訳すれば「顧客による嫌がらせ」ということです。カスハラについて各種の機関が行った実態調査によれば、いずれでもカスハラの件数が著しく増加しているとの結果が示されています。
実際に、私自身もこれまでに鉄道会社の駅員や店舗で働く従業員に対して、顧客が執拗にマイナス感情をぶつけているのを何度か見たことがあります。一方的な激しい顧客の物言いを目の当たりにし、もし自分があのようにされたらどういう対応をすればよいだろうかなどと考えましたが、簡単に答えは出せないと思いました。そのように考えると、今後従業員を守るために各企業等が具体的な施策を示し取り組んでいくことは、大変重要なことであり、速やかに進めていくべきものだと考えています。
同時に、最近私自身が顧客の立場として感じるのは、結果的にカスハラを誘発してしまいかねないような、従業員による顧客への対応も少なからず見受けられるということです。
たとえば、先日私がある企業に電話で問い合わせをした際に、電話口で対応してくれた人は質問に対し即答できず、その都度「確認をしてきますので、少々お待ちください」と保留にし、結局3分以上待たされたことがありました。そうかと思うと、いきなり上司と思しき人に電話が替わり、あたかもクレームとしての対応をされそうになったということもありました。
前段のような、業務にあまり精通していない人が顧客対応にあたるケースは、ここ2~3年で急増しているように感じているのですが、それは人手が不足していることが一つの原因かもしれません。しっかりとした知識を得る前に新人が現場に出ざるを得なくなって、顧客に対応する機会が増えているのかと推測します。このようなことが続くと、顧客側にも不満が募ってしまいますから、これは担当者個人でなく組織として対応すべき問題だと考えます。
もう一つ私が気になっているのは、後段のように問い合わせをクレームやカスハラのように扱ってしまうということです。クレームは「苦情を伝えたり、回復を要求する」こと、ハラスメントは「嫌がらせ」であり、使い方やサービス情報等がわからないところや知りたいことを確認する「問い合わせ」とは明らかに異なります。顧客から少々きつい言い方をされたとしても、内容をよく聞いてみればクレームやハラスメントには当たらないケースも実は多いのではないかと思います。それを一緒くたにして対応してしまうと、別の問題が生じてしまうのではないでしょうか。
顧客対応の際には、まずは先入観を持たずにじっくりと話を聞いてみる。その際にはいやいや対応しているのではなく、真摯に話を聞くという態度(非言語)も大切だと考えています。そして、やり取りをふまえ顧客が求めていることを冷静に判断することが大切です。
カスハラは許してはいけない、組織としてきちんと対応していくべきものです。一方でカスハラか否かの判断は、セクハラなどと同様に当事者間の感じ方に大きく左右されるなどの面があります。であるからこそ、今後、行政がきちんと指針を示してどのようなケースが該当するのかをはっきりと示し、各企業はそれに従い従業員を守るための施策を考え、確実に実施していくことが大切だと考えます。